しんどいオカマのお悩み相談

しんどいオカマのお悩み相談
第1回

しんどいオカマのお悩み相談

2018/01/25公開

まえがき

 真っ赤な口紅を引いた唇、乾燥ナマコのようなつけまつ毛に、ファンデーションやコンシーラーでは覆い隠せない青ひげ。
 筋骨隆々の身体に巻きつけたフリルドレスを煌めかせ、高さ15センチはあろうかという巨大なハイヒールで夜の街を闊歩する。
 かしましいオカマ言葉で下品な話に興じていたたかと思うと、急にイイ女風を吹かせて説教を始める。

 読者の皆さんが「オカマ」と聞いてイメージするのは、そんな姿の「元・男性」ではないだろうか。
 いつどこが初出でどのように広まったのかはわからないが、オカマにはマスキュリンともフェミニンとも言い難い、ある種の異様さをあえて醸し出しながら強くたくましく生きているイメージがある。
 現にときどき、繁華街で彼女たちのような典型的なオカマを目にする。

 「ちょっとお兄さん、寄ってかない?」
 「やだ。お兄さん、タイプ~! サービスするわよ!」
 「きれいなオカマはお嫌いかしら~ん?」

 内心、「アタシだってオカマなんですけど」と思いながら、申し訳程度にコクリと頭を下げて通りすぎる。

 ……そう、アタシだってオカマなの。ただし、世を忍ぶ「隠れオカマ」。
 昼間は勤務先で係長としてまじめに部下を指導しているただの男性会社員で、プライベートでの一人称は「俺」。女装をしたり化粧をしたりすることも、仲間内のイベント以外ではめったにしないわ。
 男性として男性が好きな、いわゆるゲイであることはカミングアウトしているけれど、家族や同僚の誰ひとりとして、アタシのことをオカマだとは思っていないの。
 こんなアタシのどこに隠れオカマたる所以があるのかというと、友人といるときは完全にオカマ言葉しか使わないし、オカマ言葉で思考して、内股でクネクネしながら小股で歩き、小指を立ててグラスを持ち、タンスに足の小指をぶつけたときは思わず「やっだーーーん!!」と叫んでしまうから。

 それに、一緒に遊ぶのはもっぱら女友だちが多いのよね。ガールズトークは好きだし盛り上がることはできるのに、オッサン同士の会話にはまったく入ることができないオッサンなの。
 それでもアタシは身も心も男性でいたいし、決して女性になりたいとは思わないわ。
 じつは、すべての同性愛者が性を変えて生きたいと思っているわけではないし、オカマ言葉でしゃべるすべての男性が女性になりたいと思っているわけではないの。
 ただ、昼間は男性として、夜は男性の格好をしたオカマとして生きることが楽だっただけよ。
 このような隠れオカマの男性はたくさんいて、アタシの男友だちはほとんどが隠れオカマなのよね。
 アタシは彼女らを「オカマ仲間」と呼んでいるのだけど、女装する者もいればそうでない者もいる。アタシたちに共通しているのは、男性として生まれながらも男性が好きなこと、延々とオカマ言葉でしゃべり倒すこと、魂がオカマであることだけだわ。

 そんな一介の隠れオカマが本書を世に出すことになったきっかけは、自身の隠れオカマ生活における愚痴をSNSに投稿し続けていたら、いつの間にか閲覧者数が莫大に増えていたこと。
 パワフルでポジティブなオカマのひとことを期待して閲覧してくださる方々には本当に申し訳ないと思いながら、今日もまた陰気な言葉をブツブツとつぶやいているわ。
 そんななかで知り合った女性編集者から、ある日「お悩み相談をしてみませんか?」と声をかけられたのよ。
 確かにオカマには人生の機微を知りつくして老成した相談役としてのイメージがあるけれど、オカマがおしなべてつらい人生を歩み、悲恋を経験しているわけではないからね。
 それに、アタシは自分が生きていくだけで精一杯なの。他人の相談に乗っている余裕なんてないわ。

 その日は「無理よ!」と即答したのだけど、結局、編集者の粘り強すぎる押しに負けて、「日々のスマイルを発見する」がコンセプトだというサイト、『アイスム』様にお悩み相談のコラムを連載させていただくことになったのよ。
 「ただし、とにかくネガティブな、悲壮感漂う回答になるからね! アイスムのコンセプトとも真逆だけど方向性は変えられないわよ! 世間のイメージする明るくてポジティブな、テンションの高いオカマのイメージとはかけ離れたものになるからね!」と念を押して。
 それでも掲載してくれる寛大な編集部がいて、毎回楽しんで読んでくださる方がいて、心に秘めたお悩みを寄せてくださる方がいて、今日まで連載を続けてこられたのは得がたい幸運ね。

 この本は、『アイスム』様に掲載させていただいた記事の一部に、新たな書き下ろしを加えたものよ。
 読者の皆さまには、どうかオカマを俗世とかけ離れた不可思議な存在として遠巻きにしてしまうことなく、この世知辛い社会を構成しているひとりのしがない人間なのだということをわかっていただいたうえで本編をお読みいただければと思うわ。
 ただ、そうは言ってもノンケとオカマとではやはり、ほんの少しだけ「しんどい」部分も違うもの。そんなしんどいオカマの目線で、誰もが抱えている大小のしんどいお悩みにお答えしたわ。

 読み終えたあとに、少しでも「オカマとかオカマじゃないとか関係なく、俺はしんどいおまえを抱きしめたいし、しんどい相談者のみんなも抱きしめたい」と思っていただけたのなら、この本の趣旨を心よりご理解いただけたものだと思っていただいてけっこうよ。

BSディム

[eロマンスjpの連載情報はツイッターでcheck!]

全話スグ読める電子書籍はコチラ↓

しんどいオカマのお悩み相談

しんどいオカマのお悩み相談明るくないし強くもない孤独に苦悩し続けるオカマがひとりの人間として綴る哀憐の讃歌

著  者
BSディム
レーベル
eロマンス新書
価  格
636 円(税抜)
※各配信書店で販売金額が異なる場合があります。

以下の書店名をクリックすると、電子書籍版の購入ページへ移動します。

配信書店の一覧はこちら