しんどいオカマのお悩み相談

他人の幸せアピールがしんどい?
第2回

他人の幸せアピールがしんどい?

2018/01/25公開
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。
最初のお悩みは、同僚の幸せアピールが許せない女性からのお悩みよ。
そうね、初っ端からいきなりごめんなさいね。正直、アタシも人生しんどい。
【お悩み】
 24歳の女性、広告業界に勤めています。
 SNSで毎日のように幸せアピールをしている同僚の女性に腹が立ちます。
 平凡な生活を送り、いつも私に仕事や恋人の愚痴をこぼしているのに、SNSだと途端に自分の幸せをアピールし始めるのはなぜなのでしょうか?
 見ていてとても腹が立ちますし、そんな彼女に腹が立っている自分自身にも腹が立ちます。どうすれば彼女を許せるのでしょうか?

オカマは幸せに見えるかしら?  それとも不幸に見えるかしら?

 どうも、オカマよ。
 普段は「BSディム」という名前でSNSやブログに眼中無人の愚痴を書き込んでいるわ。
 なんの縁でか、この場を借りて人生相談に答えていくことになったけど、これはあくまでしんどいオカマの一意見でしかないことを、みんな心得ておいてちょうだいね。
 いいこと? 初めに言っておくけど、なんでもオカマに頼るのは「終わりの始まり」よ。

 さて、本題よ。
 SNS上で幸せアピールを繰り返す行為には、いくつかの理由が考えられるわね。
 ひとつは、現実での不遇を一時だけでも忘れるための悲しい虚栄心が働いている場合。もうひとつは、本心から感じている幸せを純粋に伝えたがっている場合ね。
 では、あなたの同僚はどちらなのかしら。あなたには愚痴をこぼしてばかりだからといって、彼女は幸せではないのかしら?

 アタシのオカマ仲間の話をするわね。
 彼女は「イエス」の代わりに「ブス」、「ノー」の代わりに「ブース」と返してくるほど性根の捻じ曲がった、愚痴っぽいオカマでね。
 非モテの怒りを発散するための八つ当たりがほとんどだけど、いつもどうにもならないような愚痴を延々と吐いている、本当にどうしようもないオカマなのよ。
 でもね、あるときアタシが酔っぱらって「もうなにが自分の幸せなのかわからない」って嘆いたとき、そいつは思わぬ言葉を投げかけてきたの。

 「今日のお昼ごはん、おいしかったでしょ? 待ち合わせ場所に無事集まれたでしょ? だったらそれが幸せよ」

 普段の愚痴からは想像できない、10日間飲まず食わずで砂漠を生き抜いてきたかのような幸せのハードルの低さだったのよ。「オカマでゴリ押しすれば映画がレディース料金で観られるのも幸せ」とも言っていたけど。
 あたりまえのようにすぎていく日常から、幸運、幸福をすくいとる手を持っていたのね。
 幸せの感じ方なんて、他人が推し測れるものではないということよ。あなたの前で嘆いている誰かは、ひとつの不幸を吐き出して、9つの幸福を隠しているかもしれないのよ。

忘れがちだけど、SNSは公共の場なのよ

 彼女はSNS上に負の感情を出すべきではないとも考えているのかもね。
 あなたもアタシと同じ「ネット歴の長い匿名ブス」だと思って話をするけど、いまやネットの世界は老若男女の行き交う公共の場で、現実の延長線上に存在していることに気づいているかしら?
 現実と同等のコミュニティを形成するようになったネット上では、周囲の人々と共通の文脈で交流し、友情や絆を確かめ合い、必要とあらば陰の部分を隠しておくのは当然のことよね。
 むしろ陰気な話を繰り返す人間は疎ましく思われるわ。
 つまり、会社であなたにこっそり愚痴をこぼしても上司や同僚には同じ文句を吐かないように、彼女は開かれたネットの世界できちんと言動の分別をつけているだけなのよ。
 むしろあなたは陰の部分を見せることができる現実世界の相手として、彼女からそれなりに信頼されているのではないかしら。

 それに比べてアタシたちのいる一部の匿名ネット界隈ときたら、小心者は愚痴と自虐しか自分を語る方法がないのよね。
 アタシもSNSでは「前方からものすごいブスが歩いてくると思ったら鏡に映ったアタシだった」みたいな話しかしていないからよくわかるわ。とてもじゃないけど顔と本名をさらして言えるような内容じゃないもの。
 アタシたちは、どす黒い粘膜みたいなむき出しの感情がぶつかり合う世界に長く浸かりすぎたのよ。

 SNSで愚痴を話すのは楽だけど、だんだんと人は離れていく。けれども幸せアピールも妬まれるし、必死になってまでやるのは見苦しい。
 やがてフラットな感情しか吐くことができなくなっていくもどかしさが、あなたの苛立ちの原因なのではないかしらね。

染みついた不幸気質はそう簡単には拭えないわよ

 他人と比べて幸せになりたいのではなく、自分自身の幸せを見つけたいだけなのに、答えが見つからずに苦しんでいるあなた。
 不幸とWi-Fiしか受信できていないいまの状態をいきなり改善するのは絶対に無理よ。染みついた不幸気質はそう簡単に拭い去れるものではないわ。
 ブスなオカマがブスを自覚しないとブスから抜け出せないように、まずは不幸があたりまえで幸せが異常になっている現状を自覚してみるといいんじゃないかしら。
 そこから少しずつ、不安と不満、不幸の芽を摘んでいきましょう。きっと希望が見えてくるはずよ。

 ちなみに前述のオカマに今回の相談内容を話してみたところ、「ああ、仏門に入ればいいんじゃない? アタシも入ってた頃があったし」という、知りたくもない回答が返ってきたわ。
 日常の小さな幸せを見つけたければ、仏門に足を踏み入れるのも手かもしれない。

 でも、いいこと? 最後にもう一度言っておくけれど、なんでもオカマに頼るのは「終わりの始まり」よ。

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他人の幸せアピールがしんどい?

しんどいオカマのお悩み相談明るくないし強くもない孤独に苦悩し続けるオカマがひとりの人間として綴る哀憐の讃歌

著  者
BSディム
レーベル
eロマンス新書
価  格
636 円(税抜)
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