おひさしぶりです。
 約1年ぶりの『ショートニング』新作となりました。『ショートニング なな☆』です。
 なかなかふざけたタイトルだとお思いでしょうが、これには深い深い理由がありまして、この場をお借りしてこれまでのいきさつや紆余曲折、苦労や決断の数々を披露させていただきたいところなのですが、なぜかKADOKAWAの担当者から「まえがきで『ひらがなポーカー』の説明をしてください」と指定がありまして、えー、『ひらがなポーカー』の説明をします……なんでだ。

 『ひらがなポーカー』がなんなのかわからない人も多くいらっしゃるともいますので、まずは簡単にご説明します。
 『ひらがなポーカー』とは、学研さんから『ひらがなポーカーBOOK』の名前で発売されている、僕が考えたカードゲームです。トランプのようなカードにひらがなが1文字ずつ印刷されており、そのカードを組み合わせて言葉を作ります。

 これだけ聞くと「なんて単純」と思われるかもしれませんが、これがなかなかに奥深く、手持ちのカードを組み合わせ、入れ替え、たった数文字の言葉を作るだけなのにやたらと頭を使います。
 お年寄りのボケ防止や子どもさんの知育、最近距離がある夫婦間の修復にも効果抜群。ひねった言葉を作って場を唸らせるもよし、おもしろワードを追求するもよし、酒を飲みながら下ネタに流れるもよし。
 いろいろな場面で誰とでも楽しめる、すばらしいカードゲームなのです。

 遊び方は自由なのですが、一応僕がやっているスタンダードな遊び方を記載しておきます。基本的にはポーカーと同じだと思ってください。

①山からひとり5枚ずつカードを取る。
②カード交換は2回まで。
③できあがった言葉を順に発表し、おもしろかった人の勝ち。

 以上です。

 明確な勝ち基準はありません。その場でいちばんおもしろかった人の勝ちです。
 また、できた言葉を場に出す前や出したあとに、いくらでも説明を付け足してかまいません。『きんたろう』という言葉ができたら「むかーしむかし……」と語り始めてもいいでしょう。『すなまりね』という架空の料理をレビューしてもいいでしょう。
 そう、ひらがなポーカーとは、よい手札が回ってくるのを待つ運ゲーではなく、自分のプレゼン能力によって手札をいかようにも強くできる、いままでにないコミュニケーションゲームなのです!!

 えー、偉そうなことを言っておりますが、ゲームなので楽しくやっていただくのがいちばんです。実際にこのカードを使ってしりとりをしたり、クロスワードをしたりと、皆さんには思い思いに楽しんでいただいているようです。

 また、学研さんから全国発売されている『ひらがなポーカーBOOK』では『作った文字の枚数によって点数を獲得して勝敗を決する』というルールが採用されていました。
 いろいろな楽しみ方ができるということですね。すばらしい。これはもう買うっきゃない(他社商品です)。

 まぁここでいくら説明したところで楽しさは伝わらないだろうと思いますので、今回、「なかがき」でスズコスケさんと実際にひらがなポーカーをした様子をまとめております。雰囲気が伝われば幸いですし、伝わらなくても『ひらがなポーカーBOOK』を買っていただければ幸いです。

 以上、『ひらがなポーカー』の説明でしたが、大丈夫でしょうか。説明云々の話ではなく、これが「まえがき」なんですけど大丈夫でしょうか。「まえがき」だけではなく、「なかがき」も『ひらがなポーカー』の話であることが確定しているのですが大丈夫でしょうか。
 ちなみに「あとがきも『ひらがなポーカー』のことを書いてください」と指定されていますので、今回は本編以外すべて『ひらがなポーカー』の話になっております。担当からは「あとがきで商品化するまでの裏話などしてください!」と言われておりますが、他社の? 他社の裏話をここでするの?

 そういうわけで今回の『ショートニング なな☆』は『ひらがなポーカー』づくしとなっております。本編はいつもどおりのショートニングですが、もうどうせだったら『ひらがなポーカー』をプレイする合間や休憩時に読んでください。
 持ってない人はまず買ってください。学研より好評発売中の『ひらがなポーカーBOOK』を、どうぞよろしくお願いいたします。

 で、えー、すみません。これで終わりの予定だったんですけど、ちょっと思い出したことがあったのでいいですか。ショートニングと関係ない話なんですけど。いや、『ひらがなポーカー』がそもそも関係ない話なんでいまさらなんですけど。
 あのー、サンダル。サンダルをね、履いているんですよ、会社で。
 スーツなので革靴で通勤するんですけど、そのままだと足が蒸れるので内勤のときは愛用のサンダルに履き替えてですね、快適に社内を闊歩してるわけですよ。
 で、その愛用のサンダルはもう3年くらい使ってるやつで、底もちょっと剥がれてきてたんで、これはそろそろ買い替え時だなと某お買い物サイトを物色して、お手頃高機能な商品を注文したんですね。
 それが先日届きました。はい、もちろん履きました。「なかなかの履き心地にシエさん大満足!」でハッピーエンドだったらよかったんですけど、あのー、まったく同じサンダルを履いている人が社内にいることがわかりまして。
 いや、いいんですよ。「おっ、おそろいだな!」なんて言いながらふたりでガハハと笑ってしまえばいいだけなんですけど、相手が専務なんですね。

 皆さんうちの社内事情がわからないと思うんで、わかりやすくカブトムシで説明しますと、専務がヘラクレスオオカブトの場合、僕はその糞になります。糞です。顧みられることもない、捨て去られるだけの糞です。
 それだけ格差があるのです。専務が「黒」と言えば白いものも黒になりますし、赤いものも青になります。黄色は止まったほうがいいですし、青でも一度周囲を見たほうが安全です。後半は信号の話です。

 で、えー、なんでしたっけ? そうそう、サンダルなんですけど。そのヘラクレス専務が履いているサンダルと糞の履いているサンダルがまったく同じなわけですよ。しかも、ヘラ専のサンダルかなり使い込んでるみたいで、お世辞にもきれいとは言えない。むしろうす汚れているんですね。
 対する僕のサンダル。もうね、ピッカピカ。買ったばっかりなんじゃないの? ってくらいにピッカピカ。まぁ、買ったばっかりなんですけど。ギリギリ、カレー皿としても使えるくらいにピッカピカなんですね。
 ちなみに黒のサンダルなので、カレーをつま先側、ライスをかかと側に盛りつけると見た目がきれいです。
 まぁ、カレーは盛りつけなくていいんですけど、どう思いますか?
 あなたがヘラクレスオオカブトだったとして、糞が自分と同じ、しかも自分よりきれいなサンダルにカレーを盛りつけていたらどう思いますか? いや、カレーは盛りつけなくていいんですけど、履いていたらどう思いますか?
 僕は専務でもヘラクレスオオカブトでもないので気持ちを完全に理解することはできませんが、カサカサカサ……カサカサカサ……って言うと思うんですよね(これはヘラクレスオオカブトが「樹液、またはメスとの交尾」と言っている音です)。
 専務だったとしても、ちょっと嫌な気がするんじゃないかなと思うんですよね。「あいつ、俺とまったく同じ、しかもピッカピカのサンダルにカレーを盛りつけてやがる……!!」ってなるんじゃないかなと思うんですよね。もうカレーは盛りつけたままでいきます。

 僕はこれからも会社員としてやっていかないといけないわけですから、ここでムダにヘラクレスオオカブトといざこざを起こすわけにはいかないのです。なんとか衝突を回避したい。樹液やヘラクレスオオカブトのメスをあてがってなんとか穏便に済ませたい。
 そう思っていたある日、ふと閃いたのです。
 先ほどの言葉、皆さん覚えていらっしゃるでしょうか? カレーではありません。メスとの交尾でもありません。
 「専務が『黒』といえば白いものも黒になり、赤いものも青になる」
 これです。後半は信号の話です。
 で、僕が履いているサンダル、黒ベースに白のラインが入っているんですよ。白いものも黒に……皆さんもうおわかりですね? そう、この白のラインを消してしまえば、そこまで一緒に見えないのでは? そう考えたわけです。
 完全に天才です。うすうす感づいてはいましたが、いま確信に変わりました。はっはぁん、さては僕、天才の類だな……?
 そんな天才ですので決断も早い。思い立ったが吉日、さっそく黒の油性ペンで白いラインを塗りつぶしました。盛りつけたカレーも食べました。ようし、これでもう怖いものはない。お腹もいっぱい。かかってこいヘラクレス。
 そう意気込んだ数日後、ヘラクレスの足もとにはピッカピカの、僕より8ランク上のサンダルが輝いておりました。これが格差。これが資本主義。うなだれて足もとを見ると、そこには新品だったはずの、白のラインを黒の油性ペンで汚く塗りつぶされたカレー臭いサンダルが……。
 そのとき僕は誓ったのです。「絶対に偉くなって、おまえのそのサンダルにカレーを盛りつけてやるからな……クビを洗って待っていやがれ、ヘラクレス!!」と。というところから始まるマンガのタイトル。

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まえがき

er-ショートニング なな☆ まだ終わっていなかった短くてくだらない100の物語

著  者
シエ
レーベル
eロマンス新書
価  格
636 円(税抜)
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