禁じられた秘蜜旅行

禁じられた秘蜜旅行 ~兄嫁 瞳の場合~
第1回

禁じられた秘蜜旅行 ~兄嫁 瞳の場合~

2015/05/29公開
◇◇◇

 「今度の連休、温泉でも行こか」
 唐突にそんなことを言い出したのは夫の裕一からだった。
 「……えっ?」
 ここのところ裕一は仕事がずっと忙しく、レジャーのことなどまったく考えてもいなかった瞳は、思わず食器を片づける手を止めて顔を上げた。
 裕一は新聞に目を落としたまま、いつもと変わらない表情で食後のコーヒーを飲んでいる。
 一瞬自分が聞き違えをしたのかと思い、瞳は騒がしい音をたてている食洗機の一時停止ボタンを押してからもう一度聞きなおした。
 「いま……温泉って言った?」
 「……うん。博樹んとこも誘っといたし、4人一部屋で明日、どっか旅行会社に聞いといてくれへんかな?」
 博樹、というのは去年結婚したばかりの裕一の弟のことだ。
 歳がずいぶん離れているせいもあって、裕一は以前からこの弟をよく家に呼んだり食事に連れていったりとなにかと面倒をみている。
 瞳とももちろん面識はあるし、義弟夫婦とは仲よくしていきたいという思いもあるから無論それには異存はなかったが、なにしろ話が急すぎる。
 いい意味でも悪い意味でも苦労を知らない裕福な家庭育ちの夫は、時にこういう無謀で無計画なことを平気で言い始めるのだ。
 カレンダーを見れば連休まであと2週間あまりしかない。
 いまごろから探していい宿が見つかる可能性は低いのではとは思うものの、弟夫婦も一緒となればあまりにも妥協した場所をとるわけにもいかない。
 「高い部屋でもかまへん言うたらなんとかなるんちゃう? 金のことなら心配いらんで。俺がみんなのぶん、出したるし」
 いささか強引な、この裕一の無計画さにまったく腹が立たないといえば嘘になる。
 しかし、こういうときに愚痴をこぼさず、快く協力するのが妻の務めなのだと瞳は思っている。
 「わかったわ。なんとか探してみる」
 忙しい仕事の合間を縫ってポケットマネーでみんなを温泉に連れていってやろうという夫の心意気は、素直に嬉しかった。


 その夜、さっそく瞳はネットで目ぼしい宿をピックアップしていた。
 幸いにも、少し鄙びた場所ではあるが理想的な間取りのそこそこ質のいい宿をなんとか確保することができそうだ。
 明日、旅行代理店に確認の電話を入れなくては……と、旅行のことを思案する。
 そういえば、義弟の博樹とは何度も顔を合わせたことがあるが、嫁の愛奈とはまだほとんど話したことがない。
 今回の旅行でいい関係を築いて、ふたりともっと親しくなれればいいなと思った。
 しかし、その願いがまったく違ったかたちでかなうことになるとは、このときの瞳にはまだ想像すらできなかった。

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禁じられた秘蜜旅行

禁じられた秘蜜旅行~兄嫁 瞳の場合~

著  者
アユミ
イラスト
フジキチ2号
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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