汚された聖域

汚された聖域 ~花嫁 愛菜の場合~
第1回

汚された聖域 ~花嫁 愛菜の場合~

2015/05/29公開
◇◇◇

 それでも彼と結婚しようと思ったのは、半分は女の意地だったかもしれない。
 自分ならば必ず 「その女」を愛する男の心から追い出せる。

 愛奈はそう高をくくっていたのだ───。





 「なぁ……もっかいしよ……」
 一度目の欲望を吐き出してまだ荒い息を吐いている博樹が、キスを中断し甘えた声でささやいた。
 愛奈の体には、つい今しがたのアクメの名残がまだけだるく残っている。
 せっかく正常位で気分良く達したばかりだというのに、この心地良い余韻を消してしまいたくなかった。
 「……ん……今日はもういいよ……」
 明日に控えた結婚式の最終的な準備や段取りも、まだ残っている。
 「まだやらなきゃならないこともあるし……」
 「……そんなんあとからぼくが手伝ってあげるやん」
 「ん……でも……」

 優しい博樹のことだから、自分のことを差し置いてでも手伝ってくれるとは思うけれど、一生に一度の大切な日だからこそ余裕を持って段取りしておきたい。
 そもそも明日の結婚式を楽しみにしているのは、自分よりもむしろ博樹のほうだと思う。
 「ぼく、結婚願望めっちゃ強いねん」
 出会ったその日から博樹はそう言っていた。

 博樹との出会いは半年前。
 一緒に映画を見ようと約束していた友だちが急用で来られなくなり、仕方なくひとりで入った劇場で声をかけられた。
 「あのう……ひょっとして、自分、ひとり?」
 うしろのシートから遠慮がちに声をかけられ驚いて振り返ると、そこにはドキッとするほど綺麗な顔立ちの男性がこちらに身を乗り出すようにして座っていた。
 「あんな……じつはぼくもひとりやねんけど……もしよかったら、一緒に見ぃひん?」
 歳は愛奈と同じくらいだろうか。顔に似合わぬ関西弁が妙にかわいらしい。
 色白でほっそりとした風貌もあるかもしれないが、その青年からはギラギラした下心のようなものはまったく感じられなかった。

 「うん、べつにいいよ」
 普段はナンパしてくる男なんてまったく相手にしない愛奈だったが、なぜかほとんど抵抗感なくその誘いを受け入れていた。
 いや、おそらくすでにこのとき愛奈は、博樹のことを好きになってしまっていたのかもしれない。
 一緒に恋愛映画を観て、その流れで食事をしてお互いの恋愛観を語り合った。
 博樹の「結婚願望が強い」という言葉も、なんとなく誠実さが感じられて好感が持てた。
 聞けば、歳の離れた兄の幸せそうな結婚生活を見て、自分も早く家庭を持ちたいと思うようになったという。
 兄というモデルケースを間近で見ているだけに、その思いと主張は具体的で説得力があった。

[eロマンスjpの連載情報はツイッターでcheck!]

小説一覧 コラム一覧 コミック一覧
トピック一覧 特集一覧 TOPへ戻る

▼まとめ読みしたい方は書籍購入ページへ▼

全話スグ読める電子書籍はコチラ↓

汚された聖域

汚された聖域~花嫁 愛菜の場合~

著  者
アユミ
イラスト
フジキチ2号
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
※各配信書店で販売金額が異なる場合があります。

以下の書店名をクリックすると、電子書籍版の購入ページへ移動します。

配信書店の一覧はこちら