交換遊戯

交換遊戯 一夜かぎりの淫らな誘い
第1回

交換遊戯 一夜かぎりの淫らな誘い

2015/05/29公開
◇◇◇

 社内恋愛というのは、意外と気を遣う。
 しかも同じ課で、近くで働いている人間が恋人だったら、なおさらだ。
 ちょっとしたことでも、すぐウワサになり尾ひれがついて話が大きくなる。
 誰と誰が付き合っているなんてことには、みんなが興味津々だ。
 女子社員の休憩中の話題は、恋愛ごとか、他人の陰口がほとんどだ。
 彼女たちと上手に渡りあうのは、上司と付き合うより骨が折れるかもしれない。

 山崎美紗《やまざきみさ》が、坂口享《さかぐちとおる》と付き合い始めたのは、入社2年目。
 親友の由子《ゆうこ》も、同時期に会社の上司である岡本瞬一《おかもとしゅんいち》と付き合うようになり、あっという間に寿退社してしまった。
 やり手でイケメンの岡本課長と華々しく結婚を決めた由子をこの会社で知らぬものはいない。
 課長が有名人だからというのもある。
 由子ととくに親しかった美紗は、周囲の女性からふたりのことを聞かれたが、美紗も付き合い始めた話と結婚する話を聞いたくらいで、あまり詳しいことは知らず答えようもなかった。
 給湯室で客に出した茶器を洗い、休憩がてらコーヒーを飲みながら、ふと由子の結婚式のことを思い出す。
 由子と課長みたいに私と享も……と想像が駆けめぐり、うまく想像しきれず美紗はかぶりを振った。
 「山崎」
 背後からほがらかに声をかけられ振り返る。
 「岡本課長」
 親友の由子の旦那様であり、美紗の直属の上司である岡本課長だ。
 有能なだけでなく、人柄もおだやかで皆からの信望を集めている。
 「ひと息ついていたところ?」
 「はい。でも、そろそろ席に戻ります」
 「浮かない顔をしているね?」
 「……そんなことないですよ」
 「君と坂口のことは親しく感じているんだ。何かあったら相談に乗るよ。仕事のこと以外でも」
 「ありがとうございます」
 ウィンクに、思わずどきりとしてしまう。
 こんな妖艶な人と毎日一緒にいたら、心臓がもたない。
 「由子が、君によろしくって言ってたよ」
 「しょっちゅう電話してるんですけどね」
 ほほえむ美紗に、課長は笑みを浮かべた。
 自分の使ったカップを洗い、課長の側を通りすぎるとき、さりげなく聞いてみた。
 「いま、しあわせですか?」
 「とってもしあわせだよ」
 真摯なまなざしで語る課長の脳裏には、由子が浮かんでいるのだろう。結婚してから、より親しみやすくなったと評判だ。
 美紗は、親友のしあわせを少しだけうらやましく思いながら、自分のデスクに戻った。




 今日は残業もなく定時にあがることができた。享は少し遅くなると聞いたので、夕食を作って待っていることにする。
 彼の部屋はワンルームの美紗の部屋より広い1LDK。
 物が少ないので、部屋はすっきりと片づいている。
 生活に必要なものが目立つ気がして、初めて訪れたときは赤面してしまった。ダブルベッドがいきなり目に飛び込んできたからだ。
 そのときはまだ体の関係はなく、気恥ずかしかったのを覚えている。
 いまや、愛と欲をむさぼるためのしとねと化してしまったが。
 付き合い始めたころは、週末だけ享の部屋を訪れていた。
 しかし、平日は仕事が終わったあとの短い時間にしか会えず、すごす時間が少ないことに不満を覚えたふたりはお互いの部屋の合鍵を交換したのだ。
 角部屋で静かという好条件もあって、ほとんど享の部屋ですごすようになり、美紗は自分の部屋を週に何日も空けるようになった。
 会社でも顔をあわせ、部屋では同じベッドで眠る。
 いつも一緒にいる関係になって、より彼を愛するようになった。
 帰宅した享と夕食を共にし、バスルームでたわむれたあとベッドで愛しあう。これがふたりの日常だった。
 「っ……あああ……享……っ!」
 夢中で爪を立てる。

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交換遊戯

交換遊戯一夜かぎりの淫らな誘い

著  者
雛瀬智美
イラスト
wara
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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