彼氏がいるけど婚活します

彼氏がいるけど婚活します イケメン大学生 or 年上エリート?
第1回

彼氏がいるけど婚活します イケメン大学生 or 年上エリート?

2015/05/29公開
◇◇◇

「へい、らっしゃい!」
 駅前にあるラーメン屋はたいへん繁盛していて、いつも客でごった返している。仕事帰りのサラリーマンや大学生がせわしなく腹ごしらえをする店に、女性客はあまりいない。
 私が店に入ると、カウンターに座ったサラリーマンや大学生たちがいっせいに視線を向けてきた。そしてすぐに自分のラーメンや、手にした新聞や漫画雑誌に視線を落とす。この瞬間、いつも私は気まずくなる。
 けれど、その気まずさをはねのけて店の中に入ると、いちばん奥のカウンターに座っている男性に声をかけた。
「ヒカルくん」
「やあ」
 彼が振り返りそう言った瞬間、また客の視線を感じる。
 注目されているのがわかる。
 私、山口美咲(やまぐちみさき)は社会人7年目の29歳。大学を卒業して以来、貿易会社にずっと勤めている。自分では長く勤めているのだけが取り柄の普通のOLだと思っているが、周囲からは「仕事に生きている」なんて誤解をされているようだ。
 背が高くてショートカットな髪型のせいか、サバサバしたタイプに見られやすい。あまり女らしくない外見がいけないのかもしれない。
 三田村(みたむら)ヒカルくんは、有名国立大学で経営学を専攻している。一浪したうえに留年しているので、24歳のいまもまだ大学4年生だ。
 おしゃれとはほど遠い、あまりにも庶民的なこのラーメン屋で、ネギの大盛りラーメンを頼んでいるボサボサ頭の大学生と、OL然とした身なりをしてハイヒールを履いた女は少し不釣り合いに見えるかもしれない。
 私はなんとなくいたたまれない気持ちになりながら、ヒカルくんに小声で言った。
「もう食べ終わったの?」
「うん、ちょうど。美咲さんも何か食べる?」
 私はラーメンが好きだ。
 だからお店があまり混んでいないときは、ここでヒカルくんと一緒に食事をすることも多い。 でも今夜は男性客が多く、彼らにじろじろ見られながらでは居心地が悪い。
「今日は私はいいわ」
 そう言うとヒカルくんは勘定をすませて、一緒に店を出た。
「コンビニで買い物していい?」
 ラーメン屋から出て、ヒカルくんの下宿まで5分。そのちょうど真ん中にコンビニがある。そこで私は小さなコンビニ弁当、ヒカルくんはビールの大きいサイズとつまみを買った。
 それが私たちのいつもの行動パターンだった。
 地元の国立大学に通うヒカルくんの下宿は、築何十年かわからない古い木造アパートだ。
 古いため、家賃もそれなりに安い。ヒカルくんにとっては家賃よりも、大家に干渉されず自由に暮らせるのがいちばん魅力らしい。
 ヒカルくんは自分の部屋にカギを掛け忘れるなどしょっちゅうらしいが、それでも空き巣などの被害に遭ったことは一度もないそうだ。
 それもそのはずで、彼の部屋はいわゆる『汚部屋』なのだ。
 活字好きの彼が読み捨てた本や雑誌が、パソコンを乗せたこたつの周囲に山と積まれ、その山のあいだにいつ食べたか飲んだかもわからないカップラーメンやジュースの空き缶、パンの袋などが落ちている。
 こんな状態ではいつ空き巣が入ったとしてもわかりようがないし、ヒカルくんの部屋で盗み甲斐のあるものはパソコンくらいしかない。それさえもいつもゴミの山に埋もれているから、空き巣もすぐには見つけ出せないだろう。
 彼は子どものころから、掃除が苦手だったそうだ。
「それでもこれはひどすぎる……」
 私は心の中でいつもため息をついていた。本人にもしょっちゅう言うのだが、彼自身がこの生活状態を快適だと思う以上、なんの効果もない。
 5歳年下のヒカルくんと私が知り合ったきっかけは、私の妹のさやかだ。

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彼氏がいるけど婚活します

彼氏がいるけど婚活しますイケメン大学生 or 年上エリート?

著  者
栗原咲蓉子
イラスト
田名網けいと
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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