トライアングルナイト

トライアングルナイト 碧い眼の兄弟と……
第1回

トライアングルナイト 碧い眼の兄弟と……

2015/05/29公開
◇◇◇

 カフェテラスは春の日差しを浴びて明るくにぎわっていた。オフィスビルの5階にあるこの社員食堂はいつも大勢の人でごった返している。
 弦巻里美《つるまきさとみ》は窓ぎわのカウンター席に同僚と並んで座り、コーヒーを飲みながら窓の外を眺めていた。身長の低い里美が人や建物を見おろす機会はそうそうないから、この席にいるとそれだけで気分がよくなる。
 こんなことを誰かに言ったら悪趣味だと嫌われそうだから、このことはごく親しい人にしか言わない。
「ねえねえ、里美。これって井芹《いせり》主任の弟なんでしょ? 年はいくつなのかな」
 隣に座っていた同期の友人に腕を突っつかれる。里美はコーヒーカップをカウンターに置いて彼女が指差す雑誌に目を向けた。
 そこには白いVネックシャツにグレーのベストを着た幼なじみの姿が写っていた。
「私たちよりひとつ年下の26歳だよ」
「へえ、年下か。でもカッコいい~。この金髪って地毛? たしか主任はクオーターだったよね。兄弟だから、この人も?」
「そうそう、おばあさんがイタリア人らしいよ。いいよね、地毛でこの髪色なんて」
「うらやましいのはこっちだよ。いいなあ、里美は! 主任に加えてこんなイケメンと幼なじみだなんて」
 里美はニッと笑いながら「まあね」と得意げに答えた。
 友人が熱い視線を送っている雑誌には街のカフェ&バーのオーナーが特集してあって、そのうちのひとつに幼なじみである井芹悠《いせりゆう》のインタビューが載っていたのだ。
 友人が言うところの主任とは同じ会社の上司で、悠の兄の井芹翔太《いせりしょうた》のことだ。里美は井芹兄弟と幼いころからの知り合いなのだ。
「でも、主任と一緒で遊んでそうだね、この人」
 友人は悠の写真を見ながらポツリとつぶやいた。彼がシェイカーを振る姿はほかのオーナーよりも大きく掲載されているからとても目立つ。
 ゆるやかなウェーブのあるミルクティブラウンの髪は光の加減で金色にも見え、青い目をした悠は見た目が華やかだ。悪く言えば派手だから、友人がそう思うのも無理はない。里美はそれを否定すべく、すぐに口を開いた。
「そうでもないと思うよ。浮いた話なんか聞かないもん。翔太くん……じゃなかった、井芹主任と違って」
 里美は目の前の大きな窓にぼんやりと映り込んでいる茶髪に黒縁眼鏡の男の姿をチラリと見やり、目で追った。井芹翔太はほがらかな笑みをたたえて複数の女性と一緒に昼食をとっていた。
 今日も彼はイタリア製のやわらかそうなスーツを上手に着こなしている。長い脚を組んで上品に笑いながら持ち前のトーク術で女性を魅了する翔太は、いつ見ても完璧なプレイボーイだ。
 里美は窓面に映る麗しい男から雑誌の美男へと視線を移して小さくため息をついた。

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トライアングルナイト

トライアングルナイト碧い眼の兄弟と……

著  者
熊野まゆ
イラスト
コナコ
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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