遠隔操作でラブえっち!?

遠隔操作でラブえっち!? 深夜の濡れちゃう残業
第1回

遠隔操作でラブえっち!? 深夜の濡れちゃう残業

2015/05/29公開
◇◇◇

 水嶋雅美《みずしままさみ》。
 それが彼の名前だった。
 彼──。
 そう、彼。歴とした男性。
 部屋に入ってきた彼を見た瞬間、あたしの心臓は小さな胸を突き破り出てくるのではないかと思うほど跳び上がった。
 もちろん事前に聞いていた名前と性別とのギャップだけで、そこまでは驚かない。
 なんというか、男性に対して使う表現ではないかもしれないけれど、ものすごく綺麗だったのだ。
 驚くほどに……。
 化粧をしているというわけではない。
 そういう着飾った美しさとは違う。
 目や鼻、口、眉など、顔のパーツのどれをとっても完璧で、それらがバランスよく配置された、持って生まれた自然な美しさ。
 メガネがワンポイントとなり、その美しさをさらに引き立てている。
 顔だけじゃない。
 すらっと高い背に対して、手や足の長さも長すぎず短すぎず。
 髪は黒いサラサラのナチュラルショートで、濃いブルーのスーツも自然な感じに着こなしている。
 こんな男性が実在するのだという驚きで、あたしはしばし呆然としてしまった。


 大学卒業後、あたしは修士課程へと進んだ。
 小さい頃からの夢のため──というのなら、少しは恰好もつくのだが……。
 なんのことはない。大学の4年間では、就職先を決めることができなかったからだ。
 いわば、執行猶予の2年間。
 しかしそれも無駄に終わり、あたしはこの春に晴れて派遣社員として社会人生活をスタートせざるを得なかった。
 そうなってしまった原因は自分でもよくわかっている。
 男性が苦手なのだ。
 これは致命的だ。
 化粧品や女性下着のメーカーでさえ、面接には男性がいるのだから……。
 あたしが生まれてすぐ母は離婚をした。
 原因は父の浮気。
 母の知り合いの弁護士がかなりのやり手で、IT系の会社を経営して儲けていた父からかなりの養育費と慰謝料をせしめ──もとい、いただくことができた。
 おかげで女手ひとつでも、姉もあたしもなんの不自由もなくここまで育つことができた。
 そんな家庭環境に加え、幼稚園から高校まで女性だけの男っ気のまったくない生活を送ってきた。
 女子大に入学して男性教授の講義を受ける機会もあったが、そのときにはすでに手遅れ。
 異性に対する免疫はなかなかできず、男性との会話はもちろん目を合わせるだけで緊張してしまうという箱入り娘ができあがってしまった。
 それでなくとも緊張する面接の場で男性の面接官を相手にまともに話ができるわけもなく、就職活動はことごとく失敗に終わった。
 もちろん派遣でも面接はある。
 しかし派遣会社の場合、担当者が面接に同席することが多い。
 面接においてそれはかなり心強い。
 加えて、今回は面接官が女性ひとりという幸運も重なった。
 かくして、あたしは無事にWEB制作会社に配属されることが決まった。
 「た、小鳥遊朱美《たかなしあけみ》です!」
 初めての職場、初めての仕事。それに加えて男性との会話。しかも絶世の美形。
 緊張のオンパレードで、頭の中は真っ白だった。
 ──小さい鳥が遊ぶと書いて「たかなし」と読みます。「鷹がいないから小さい鳥が遊べる」ということから、「鷹がいない」、「たかなし」となりました。
 いつもなら、自己紹介ではそう続けるのが定番なのだが、そんな余裕さえなかった。
 気がつくとロボットのようにピコーンと立ち上がって、カクンと勢いよく頭を下げていた。
 やっている本人がへんだと思ったのだから、他人から見ればものすごくへんだったに違いない。
 しかし彼は眉ひとつ動かすことなく、
 「水嶋だ」
 自分の名字を告げたかと思うと、
 「仕事の説明をする」
 そう言ってきびすを返した。
 仕事にしか興味はない。そんな印象。
 かえってそれで緊張が消し飛んだのはよかったけれども──。
 人間関係に対する不安が、心の奥底にくすぶりはじめていた。

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遠隔操作でラブえっち!?

遠隔操作でラブえっち!?深夜の濡れちゃう残業

著  者
亜朝あおん
イラスト
wara
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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