愛執の忘却

愛執の忘却 囚われた身体と消せない淫欲
第1回

愛執の忘却 囚われた身体と消せない淫欲

2015/05/29公開
◇◇◇

 全面ガラス張りのラブホテルの部屋。
 どこを見ても自分の淫らな姿が映し出され、否が応でも目に入ってしまう。
 恥ずかしいのに
 見たくないのに
 無意識のうちに自分の姿が映し出された鏡を凝視していた。

 手首と足首を同じ紐で拘束され、脚はM字に開脚した状態から動けない。 
 与えられる快感に溺れ、全身が汗ばみ、肌はピンク色に染まっている。
 紅潮した頬、うるんだ瞳。自分じゃないみたいにエロティックだ。下着を脱がされていないのが救いだが、それさえかえっていやらしく感じてしまう。
 透ける繊細なレースのブラは胸を持ち上げるようにしてずらされ、刺激を与え続けられた乳首は大きく膨らみ色濃く尖っている。
 大きく開いた股のあいだに篤《あつし》の栗色の頭が小刻みに揺れているのに目が釘づけになり、よりいっそう興奮が高まり、すべての神経が敏感になる。
 パンティのクロッチ部分をずらし、膣内に押し込まれたバイブがブルブルと振動し、篤がそれを抜き差しするとぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて愛液が溢れ出す。
 それをじゅるっと音を立てて吸いとったあと、今度は感じる突起を口に含み、愛液にまみれた舌で転がし始める。
 「ああっ……あっあああっ! もうだめぇ……許してぇ、あつしぃ……」
 あまりの快感に腰が砕けそうになるほど震え続けている。
 いったい何度達しただろう。意識は朦朧とし、官能の深い海の中で揺られているみたいに気持ちいい。
 篤に与えられる究極の快感という名の甘美な拷問。
 あたしはそれの虜《とりこ》だった。
 「あ、ああっ……ま、またくるっ、激しいのが……ああっ、イっちゃう」
 イキ続けているはずなのに、さらに激しい快感に襲われる。甘く痺れる膣内が急に熱くなり、収縮が速くなる。震える腰の動きに激しさが増し、そして止まった。
 声も出ず、口を開けたまま、あたしは大きく何度も震えた。
 意識が遠ざかるとき、篤の声が聞こえた。
 「妙恵は俺のものだ。もっと感じて、俺なしじゃダメな体になればいい。俺から離れられなくなればいい」
 大好きな篤の声、甘く優しい声が耳から脳、全身に浸透していく。

 ──あたしは……篤のもの
 ――あたしは……篤なしじゃもうダメなの……
 ――篤を……愛している……から?

 ううんっ──。
 全身が痺れたような甘い疼きに意識が現実に目覚め始める。
 そっと目を開け、ぼやけた視界に焦点が合うのを待つ。
 薄暗い部屋に差し込む青白い光。まだ夜が明けてないことを知らせている。そこにはガラス張りの天井も壁もない。ここは、見慣れた自分の部屋だとぼんやりした頭で認識する。

 ゆ、夢だったんだ……?
 いやだ、あたし……また夢で……。

 寝返りを打つと、ひんやりとした感触を下半身に感じた。エロティックな夢を見て濡れているのだと気がつき、絶望的な気分になる。
 篤と別れて3年。
 篤から与えられた快感を体は痛いほど求め、疼いている。
 いったいいつになったらこの疼きから解放されるのだろう……?

 風雨が窓を叩きつける音に我に返る。
 激しい雨音に混ざり、ヒューっとときおり風が鳴く。

 あの日もこんな激しい雨と風だった。
 篤のマンションから、逃げるように全速力で暴風雨の中に飛び出した。篤が追いかけてきたのは知っていたけれど、最後まで追いかけてはこなかった。
 逃げたかった。何がなんでもあたしは篤から逃げたかったのだ。なぜなら、怖かったから。篤にすっかり虜になり、篤に依存してしまっている自分自身が怖かった。
 篤に教え込まれた強すぎるほどの快感は依存性があり、篤が望んだとおり、あたしは彼なしじゃ生きていけないと思い込んだ。そして彼から離れられなくなっていた。

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愛執の忘却

愛執の忘却囚われた身体と消せない淫欲

著  者
泉怜奈
イラスト
国原
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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