恋色ハンドカフス

「俺さ、佐保ちゃんのこと……早く抱きたいんだけど……」
第1回

「俺さ、佐保ちゃんのこと……早く抱きたいんだけど……」

2015/07/31公開
 時計台の真下でお気に入りのワンピースを着て待つこと一時間、ようやく平喜多佐保《ひらきたさほ》の前に現われたのは付き合って一年になる彼氏、犬塚優太《いぬづかゆうた》だった。
 「ごめん! 佐保ちゃん! 一時間……遅刻しちゃって……本当、ごめんね。……怒って……る?」
 両手を顔の前に合わせて「ごめん」というポーズをする彼の言葉に、佐保は唇を尖らせる。
 「どうせ、また仕事が長引いちゃってーって、言い訳するんでしょ?」
 「当たり。さすが、佐保ちゃん!」
 にっこりと屈託のない笑顔を見せて、優太は佐保の頭をぽんと大きな手のひらで撫でつけた。一瞬、頬を赤く染まらせたが、一時間も遅刻してきて電話の一本もないという超ルーズな彼を怒ったりすることもなく、いつものことだと半分呆れ顔の佐保。
 それでも、着崩した黒いスーツ姿の彼に胸が高鳴る。
 「ネクタイ……曲がってる。それに、シャツのボタンも外れたまんま……」
 言いながら、佐保は長身の彼の襟元を手早く直すと、じっと視線を合わした。栗色の髪が風になびくたびにドキドキしてたまらない。
 ──仕事が長引いたって……ホストの仕事じゃないよね?
 周りの女の子の視線がひしひしと伝わるくらいに、優太は注目されるほどの容姿だ。端正な顔立ち、すらりとした身長に細身の体と思いきや、鍛え抜かれたたくましい体。
 ──あたしには……もったいないくらい。
 こつんと、優太の胸に額を押しつけた。付き合い始めてからの条件で、お互い干渉しないことを決めた。それは佐保からの提案でもあったのだが、自分から言い出した分、彼の仕事については一切聞けなくて、彼もまた黙ったままだ。なので、いまのいままで優太の仕事について佐保は知らない。
 ──公務員とは聞いているけど、なんの仕事か詳しくは聞いていない。学校の先生? それとも役所勤め? それならこんな不規則で急に職場から呼び出されるとかはありえない。
 デートのときでも、セックス中でもたびたび携帯電話に呼び出しの連絡が入る。そのたびに優太は仕事を優先して佐保をひとりにする。
 ──まあ、でもそれは仕方がないか。
 そうひとりで納得しながら、佐保は口をつぐんだ。ネクタイとシャツのボタンをきちんとつけ終わると、優太の指が佐保の頬に触れた。そのまま頬を通過した指先は、耳たぶを軽く挟んで、耳のうしろにそっと触れる。
 びくんっと体が跳ね上がった佐保の頬が蒸気してピンク色に染まった。
 「優太……? なに……?」
 悟られないように平静を装うが、じっと見つめられてさらに頬が真っ赤になった。
 「俺さ、佐保ちゃんのこと……早く抱きたいんだけど……」
 艶めいた色気を帯びた瞳がじんわりと佐保の体を刺激する。低くて心地良い声が静かに響く。優太の頬もほんのりと赤く染まっていた。

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恋色ハンドカフス

恋色ハンドカフス甘く乱れる拘束プレイ

著  者
森田りょう
イラスト
純友良幸
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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