ドS社長は緊縛師

獲物を狙う猛禽類のような厳しい視線に
第2回

獲物を狙う猛禽類のような厳しい視線に

2015/10/04公開
「えっ、そうなんですか……おめでとうございます」
 美紗子がそう告げたところで、佐和は少し寂しそうにふっと笑った。
「それが、そんなにめでたくもないんだよね……」
「えっ……?」
 そして頭を掻いて、少しバツが悪そうに苦笑して、佐和は子どもが生まれてすぐ、その男性と別れたこと。それ以来ずっとひとりで子どもを育ててきたことを告げた。
「そ、そうだったんですか……すみません」
「あ、気にしないで。子どもはかわいいし、いまは小さい会社で経理の責任者をしていて、わりといい給料もらってるから生活は楽なんだよ。でも……」
「でも……?」
「ちょっと忙しすぎてね。あまり子どもと一緒にいてあげられないのが悩み……信用できる人がいたら仕事を半分任せて、できるだけ長く一緒にいてあげたいんだけど……」
 と、そこまで言ったところで、佐和が美紗子の鞄のポケットに差し込まれた就職情報誌に目を止めた。それからスーツ姿の美紗子を見て、もう一度就職情報誌を見て、佐和はふたたび口を開いた。
「美紗子、もしかして求職中?」
「え、あ……はい。前の会社ではずっと事務の仕事だったから、同じような条件で探してるんですけど、なかなか見つからなくて」
「ちょうどいいわ!」
 そして胸の前で両手をパンと叩き、新しいいたずらを思いついたいたずらっ子のように笑って美紗子に告げた。
「もし決まってる就職先がないなら、うちで働かない?」


 オフィス鞍馬、その会社はカフェからほど近いオフィスビルの2階にあった。
「まあ、事務関係はあたしに一任されてるから、社長面接っていってもかたちだけよ」
 佐和にそう言われて引きずられるように連れてこられた社長室で、美紗子はその人物を前に緊張した面持ちで立っていた。
「貴船美紗子……か」
 目を通していた彼女の履歴書から顔を上げ、そうつぶやいた人物が鞍馬(くらま)恭介(きょうすけ)、33歳。
 身長は、180センチはあるだろうか。身体は細いが華奢ではなく、筋肉質に引き締まった印象。少しだけめくり上げたカジュアルめなジャケットの袖から覗く腕には、くっきりと筋肉のエッジが立っている。
 そしてその鍛えられた肉体以上に印象的なのが、顔立ちである。
 二枚目、ハンサム、男前。おそらくそう分類されるであろう恭介は、その容姿目当ての者が容易に近づけないような空気を醸し出している。
 やや薄めの唇を固く結び、凛々しい眉のあいだにシワを寄せ、獲物を狙う猛禽類のような厳しい視線で見つめられると、まるで心の中まで見透かされているようで自然と緊張してしまう。
「いいだろう、採用しよう」
 緊張しきりの美紗子にそう告げて、恭介は右手を差し出した。
「社長でロープアーティストの鞍馬恭介だ」
「は、はい……よろしくお願いします」

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ドS社長は緊縛師

ドS社長は緊縛師熱い指に囚われて

著  者
田中まさみ
イラスト
柾木見月
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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