ドS社長は緊縛師

緊縛の会
第3回

緊縛の会

2015/10/04公開
 ロープアーティストという聞きなれない言葉に引っかかるが、あいかわらずの厳しい表情に訊(き)き返すこともできずに美紗子が差し出された右手を握る。
「さっそくで悪いが初仕事だ。これからは会社主催のイベントを手伝ってもらおう」
 すると恭介はそう告げて、握った美紗子の手を引いた。
「えっ、いまからですか?」
「そうだ。社員総出の大きなイベントだからな」
 そう言いながら、恭介は美紗子の手を引いたまま社長室を出た。
 社員総出というのは事実なのだろう。入ってきたときは何人かのスタッフが忙しそうに立ち働いていたオフィスに、いまはひとけがない。
 そのままオフィスを出て階段を下りて表に出ると、佐和がタクシーを停めてふたりを待っていた。
「あらあら、いきなり仲がいいのね?」
 ふたりを交互に見る佐和にそう告げられて、そこで美紗子は手をつないだままでいることに気づいた。
「あわわ……こ、これは……」
「馬鹿、そんなんじゃない」
 美紗子が言い訳しようとすると、言葉をさえぎるようにそう告げて、恭介は美紗子を先に後部座席に乗せ、続いて自分がその隣に座った。
「ふうん、そういうことなんだ」
 それからにやっと笑ってつぶやいて、佐和は助手席に乗り込むと、運転手に行き先を告げた。


 タクシーが停まったのは、繁華街のビルの前だった。
「ここは……」
 アート系のイベントがよく開催されるそのビルに、美紗子はお気に入りのフォトグラファーの個展で訪れたことがあった。
(ロープアーティストというのは……ロープで何かアートを作るってこと?)
 漠然と考えていると、タクシーのドアが開いた。
「行くぞ、もう時間がない」
「は、はい……」
 恭介に声をかけられ、支払いは佐和に任せてタクシーを降りる。
 恭介の広い背中を追ってエントランスに入る。
(えっ……)
 そこで、本日開催のイベントを紹介するボードに美紗子の目は釘づけになった。
『緊縛師(ロープアーティスト) 鞍馬恭介・緊縛の会』
「えっ……き、緊縛って……つまりロープアーティストというのは……」
「ロープアーティスト、緊縛師ってこと。女性を縄で美しくも淫らに縛りあげて、隠された魅力を引き出す縄の芸術家……あたしが考えた肩書きよ」
 美紗子が呆然とつぶやくと、支払いを終えて追いついてきた佐和が得意げにそう告げた。
「つ、つまり、オフィス鞍馬というのは……?」
「緊縛師、鞍馬恭介の個人事務所。こんなイベントを主催したり、オリジナルの緊縛DVDを製作販売したり、動画を配信したり、そんな仕事をしてる会社……って、社長から聞かなかった?」
「は、はあ……採用しようとしか」
「もう、しかたない人だなぁ、無口で無愛想にもほどがある……ちょっと社長!」
 呆然としたままの美紗子をよそに恭介に詰め寄り、佐和は言い争いをはじめた。
 そのうしろ姿が少し遠くなってから、美紗子もはっと我に返り、あわててふたりのあとを追った。

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ドS社長は緊縛師

ドS社長は緊縛師熱い指に囚われて

著  者
田中まさみ
イラスト
柾木見月
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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