御曹司の淫惑調教

御曹司の淫惑調教 甘美な罠に堕とされて
第1回

御曹司の淫惑調教 甘美な罠に堕とされて

2017/12/28公開
 目覚めると、すぐそこに男性の顔があった。
 いまは土曜の朝。
 ここは四隅の柱で支えられた天蓋つきの豪奢なベッドの上。
 お互いの息がかかるほどの至近距離で、怜悧な光をたたえた澄んだ切れ長の黒い瞳に見つめられている。
 その瞳のすぐ上には意思の強さを感じさせるかたちのいい眉。眉の根もとからまっすぐにすっと通った高い鼻梁。やや薄めの繊細そうなくちびる。
 ふだんは神経質な印象を与える端正な顔の男が、いまは慈愛に満ちた表情でわたしを見ている。
 朝桐悠人(あさぎりはると)。旧華族の流れを汲む資産家、朝桐家の御曹司。
 とはいえ彼はただのお坊っちゃまではなく、莫大な朝桐家の財産の運用と複数の事業を一手にとりしきる実業家でもある。

「おはよう、美晴」

 窓から差し込む朝の光のなか、身体の下敷きになっていた腕のしびれを感じながら聞く、落ち着いた美声。

「よく眠れたかい?」

 彼のやさしい笑顔は、わたしにしか見せないもの。
 彼の甘美なる罠に落ち、彼の愛を受け入れ、そのなかで悦びを見出したわたしだけが、見ることを赦されたもの。
 天が二物を、いや三物も四物も与えたような彼が、たくましい腕の上にわたし、豊崎美晴(とよさきみはる)の頭を乗せ、私だけにほほ笑んでいる。
 もう一方の手で私の首に巻かれた黒革の首輪につながれたリードを持ち、顔を引き寄せる。

「おはようござ……んっ」

 朝の挨拶もさせず、言葉を奪うように情熱的にくちびるを貪むさぼる。
 わたしが彼にくちびるを激しく求められながら、もう首輪でつながれていなくても彼から離れられないと。離れたくないと感じているのは――。
 その理由を説明するためには、あの日の夜のことを語らなくてはならないだろう。
 わたしが彼の黒き罠に囚われ、虜となった淫靡な一夜の秘めごとを。



【豊崎美晴殿 法人営業部勤務を命ずる】

 愛想もなにもない短い文面の辞令を受け取ったわたしは、身体が震えだすほど喜びを感じていた。
 法人営業部は社内の花形部署である。
 地元の大学を卒業して5年、就職した不動産会社の店頭での営業でコツコツと実績を積み上げてきた努力が、ようやく認められたのだ。
 正直、ここまでの道のりはイバラの道だった。
 入社1年め。希望していた営業部に配属されたものの、女性が前に出て活躍することをよしとしない店長の下で、補助的な仕事しかやらせてもらえなかった。
 2年め。異動でやってきた新しい店長のおかげで、店頭での接客、物件への案内などを自律的にやらせてもらえるようになった。
 3年め。勤務していた店舗のなかではナンバーワンの評価を受けた。
 4年め。店舗ナンバーワンの成績を維持して、法人営業部への転属を希望したが、叶わなかった。
 5年め。それでも腐らず頑張って、店舗営業のなかでは全社で5本の指に入る営業成績を残した。
 そして今年、念願叶って法人営業部への異動が決まった。
 そのうえ異動した法人営業部で、わたしはさらに嬉しい報らせに迎えられた。

「きみにはこの顧客を担当してもらう」

 そう言って課長が取り出したリストに書かれた名前は朝桐悠彦(あさぎりはるひこ)氏。個人でありながら法人営業部が担当する、地元では有数の資産家、朝桐家の現当主である。
 そんな重要な顧客の担当を任されるのは、わたしの実力が認められたからではないだろう。

「いいか、朝桐氏は何十年間も、すべての不動産物件の管理をうちに任せてくれている上客だ。決して粗相がないように」

 課長がそう言うように、朝桐氏は決して粗相があってはならない重要な顧客。同時に、粗相さえしなければ、これまでの慣例に従って物件の管理を任せてくれるであろう、長年のお得意さま。
 そして大切な顧客に粗相をするような営業社員は、そもそも法人営業部に配属されてこない。そのことがわかっているから、課長はわたしを朝桐氏の担当にしたのだ。
 (でも、これはわたしにとって大きなチャンス……)
 わたしにも営業としての野心があった。
 もっと上を目指したい気持ちがあった。
 そして自分にはその力があるという自負もあった。
 そのために、有数の資産家であるばかりか、家系図をたどれば旧華族につながる名士でもある朝桐氏に気に入られたい。彼の人脈でもってさらに多くの顧客から仕事を請け負いたい。
 その野望を胸に秘め、わたしは朝桐邸へと向かった。

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ドS社長は緊縛師 熱い指に囚われて

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御曹司の淫惑調教

御曹司の淫惑調教甘美な罠に堕とされて

著  者
田中まさみ
イラスト
もなか知弘
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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