幼なじみはオオカミでした

幼なじみはオオカミでした 淫らに食べたい欲情スイート
第1回

幼なじみはオオカミでした 淫らに食べたい欲情スイート

2016/07/29公開
 真っ暗な夢の中で、目を凝らした先にいたのはひとりの男の子だ。
 小学生のころ、近所に引っ越してきた同じ年の男の子。親に「なかよくしてあげるんだよ」
と念を押されたのをすごくよく覚えている。
 小さなころからまじめだった柿崎(かきざき)こずえは、親の言葉をうのみにして、会ったらなるべく声をかけるようにしていた。男の子はおとなしくて、かわいい顔立ちだった。そのせいか話しかけやすく、打ちとけるのにも時間はかからなかった。
 小学校は家や外でよく遊び、中学生になっても仲がいいままだった。男の子がこずえになついてくれていたというのもあるだろう。ほかの男の子と遊ぶよりも、こずえと一緒にいたい、とよく口にしていたらしい。
 しかし、高校生になると違う学校へ進学したため会う機会は減っていった。近所だから朝や夕方など見かけたが、高校生になって彼はいつのまにか変わってしまっていた。
 高校の友だちの影響だろうか。髪を明るい茶色に染め、耳にはピアスの穴がいくつも開けて、制服の着こなしはだらしない。彼の変化にこずえはショックを受けた。前と変わらず地味なままのこずえには話しかける勇気はなく、自然と距離を置くようになっていた。
 けれど彼は気にすることなく、見かけるたびに親しげに声をかけてくる。見かけは変化したが、彼の中身は幼いころと変わらないように思えた。昔と変わらない笑顔がそこにあった。
 昔のように話をしたりするようになったある夏の日。家に誘われて遊びにいくと、彼の目の色が変わった。
 そのときの出来事はこずえ自身あまり覚えていない。
 覚えていないというより、必死すぎてところどころしか記憶になかった。たとえばふれる肌の熱さだとか、痛みだとか、熱視線だとか。
 最初のうちは戸惑い抵抗したけれど、興味がないわけではなかったこずえは、ほかに好きな人もいなかったこともあり、押されるまま受け入れていた。
 ふたりとも、はじめてだった。
 その日からこずえは彼の目を見ることができなくなり、会って話しかけられそうになっても逃げてしまっていた。避け続けたまま大学生になり、こずえは実家を出てひとり暮らしをはじめた。

 以来、彼とは一度も会っていない。

 どうしてこんな夢を見たのかというと、その男の子――前田遼仁(まえだりょうじ)が、こずえの勤める会社に転職してきたからだ。


◇ ◇ ◇


「おはようございます、柿崎さん」

 いつも早めに出勤するこずえよりも先に出勤し、さわやかな笑顔を向けてくるのは遼仁だ。10月に営業部に配属されて、そろそろ1ヵ月が経つ。営業事務のこずえとはデスクも近く、ほぼ毎日顔を合わせるうえに、仕事の打ち合わせをすることもある。
 まったくどうしてこずえと同じ会社に、しかも営業として転職してきたのか、誰か説明してほしい。
 積極的に旧交を温める気にはなれないが、オフィスでは適度に社会人としての付き合いをすればいい――そう考えていたのだが、彼はなぜかこずえと他人のふりをしているのだ。まるで、こずえと初めて会ったかのようなそぶり。
 そんな態度をされたら、こずえも同じように他人のふりをするしかない。
 出勤初日の挨拶のとき、遼仁はやたらとこずえに視線を向けていた……と思う。こずえは顔と名前ですぐに彼だとわかったし、彼もたぶん気がついているだろう。
 なのに、遼仁はこずえと初対面であることを貫き通し、他人のふりを続けているのだ。

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幼なじみはオオカミでした

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著  者
春密まつり
イラスト
純友良幸
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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