クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい
第2回

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

2016/10/01公開
 ここの存在を知ったのは、ひと月ほど前だ。
 上階のオフィスのお客さまに書類を届けた帰り、間違って上りのエレベーターに乗ってしまい、最上階に着いて。ついでだから降りてみよう、と思い立った。
 最上階もオフィスばかりだと思っていたのに、上に続く階段を見つけたのだ。興味に駆られて上ってみたら、メルヘンチックで古めかしい木製ドアがある。
 ドイツの古城についているようなドアを見たら、開けてみたくなるのが乙女心というやつではないだろうか。だって、引っぱったら開いてしまったのだ。そうしたら……。そこに、『秘密の花園』があった、というわけなのだった。
『秘密の花園』は、子どものころ、大好きな本だった。孤独な女の子が、引き取られた先の伯父さんの家の庭の、秘密の花園をよみがえらせる話。
 けして美人とは言えない少女が主人公だった。そんな主人公に、わたしは共感を寄せたのだと思う。
 わたしも美人とはいえない容貌だ。おまけに小学校、中学校、高校と、ずいぶん太っていた。彼氏を作ろうなんて思いもしなかった。何度も何度もダイエットをしては失敗して、栄養のことを勉強しようと思ったのは、じつはまず初めに自分が痩せたかったからだ。
 大学は家政学部の食物学科を選んだ。二十歳になったころ、やっとダイエットが成功しいまの体型を維持できるようになった。だからいまは見た目が太っているということはないと思う。でも油断するとすぐ“ちょいポチャ”になってしまうので、気をつけている。

(それにしても、ここってヘンだよね。勝手にわたしだけの『秘密の花園』扱いしてるけど)

 自分でもなんとなく笑ってしまう。
 ここは完成された室内庭園。こっそり入り込んでよい場所ではないはずだが、どうしても来てしまう。まるで吸い寄せられるように。

(だってなんだか、魔法の庭、っていう気がするんだもん)

 暑くも寒くもなく、外からの物音もなく、自然の匂いと水の音だけがする空間。
 わたしは深呼吸して持ってきたお弁当を出した。週に3日はこうやってここでランチをしている。お昼のひとときをここですごすのが、わたしのひそかな楽しみになっていた。
 今日もいつものようにすごそうとしたとき……。
 なんの前触れもなく、いきなりドアが開いた。
 わたしはお弁当を落としそうになり、あわてて蓋を締め、とっさに腰を上げた。
 入ってきたのは、背の高いスーツ姿の男性だった。

(どうしよう)

 あわてたものの狭い空間で隠れるような場所もなく、棒立ちになってしまった。
 男はじいっと見下ろすようにわたしを見ている。

「すみません」

 声が震えた。

「君、誰?」

 いまさらになって事の大きさを感じ、怖くなってしまった。こんなステキな場所なのだ、出入りする人間や管理者がいないはずがないのに、これまで誰にも会わなかったからと甘く見て、勝手に入り込んでいたのだから。

「本当にすみません、ごめんなさい。わたしここで、ごはんを食べてただけなんです」

 頭の中でぐるぐると、不法侵入、という言葉が回った。どうしよう……。

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クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

著  者
乃村寧音
イラスト
柾木見月
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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