クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい
第3回

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

2016/10/02公開
「ごめんなさい、本当に。つい……出来心っていうか、鍵が開いてて……ステキな場所で……」

「出来心?」

 男は不審そうに言い、続けた。

「何言ってるかよくわかんないけど、まずは質問に答えてくれないかな。君、誰? どこから来たの? 名前は? べつに怒ってるわけじゃないんだ。ただ、一応ここは俺の会社で管理している場所だからね」

 わたしはようやく少し冷静になってきた。
 さらっとした黒髪に、面長で細面の顔。ちょっと冷たそうな切れ長の目。スレンダーだけどしっかりした身体。スーツはダークブルーで、ピタリと似合っていた。ひとことで言うと、涼し気なタイプの美形だった。

(あれ? なんかこの人、ものすごくカッコいいかも。でもいまそんなこと、考えてる場合じゃないよね)

 てっきり怒られるかと思ったのだが、男の表情はべつに険しくはなかった。

「すみませんでした。長谷川由夏(はせがわよしか)と申します。このビルの1階のドラッグストアで働いています」

「俺は高木智哉(たかぎともや)です。ふうん、そうなんだ。そういえば1階にドラッグストア入ってるよね。行ったことなかったな。で、ここへはなんで?」

「たまたま偶然、入り込んだんです。公園みたいでステキだなって。すみません」

「なるほど。ここはどうせ使っていないから、鍵が開いているときなら来てくれてかまわないよ。そのかわり、誰にも言わないでもらえるかな? 君ひとりくらいならここでランチしてもらってもいいけど、人が増えると困るからさ」

「え。じゃ、またここに来てもいいんですか? あ、はい。もちろん、誰にも言いません!」

「いいよ。それじゃ、俺は仕事があるので失礼するよ」

 男はそう言うと、さっさと出て行ってしまった。

(なんだかものすごくカッコいい人だったな。いままで、あんなステキな人見たことない)

 わたしは、ぼう然と男を見送った。 






 1週間ほどして、わたしはまた『秘密の花園』に向かった。
 毎日満員電車に揺られてビル街に出勤し、その中でもかなりメタリックな雰囲気を漂わせている高層ビルでの仕事に疲れてくると、気持ちが自然にあの空間へと向いてしまう。

(木や草花もいいけど、水辺がいいんだよね……)

 ランチタイムになるとエレベーターを降り奥の階段を上がり、ドアを開ける。中に入ると、静かな空間にしばし身を浸した。

(また、ここに来られてよかった)

 気持ちが落ち着いた。
 日々の仕事に不満はない。人間関係にも恵まれていると思う。仕事帰りに学生時代の友人たちと食事をしたりお酒を飲んだり、ストレス解消もしている。少しずつ貯金もしているし、いたって平和で満たされている。それなのに。

(ここを知ってからかもしれない)

 なんとなく思う。この場所を知らなかったときも、どこかで何かが……。誰かが、自分を呼んでいるような気がしていた。ただ、そんな気がしただけかもしれないけれど……。でも、この場所にこっそり入り込むようになってから、わたしは自分の中に『大切な秘密』を抱えているような気がしていた。

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クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

クールなイケメンはぽちゃガールを溺愛したい

著  者
乃村寧音
イラスト
柾木見月
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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