宝石王子の溺愛ビジュー

宝石王子の溺愛ビジュー
第2回

宝石王子の溺愛ビジュー

2016/10/29公開
「え、と……って、つ、月宮部長!」

「あ、ビックリさせちゃった? いやぁ、ウチの部署もかなりバタついててね。一時的に抜けてきたんだ」

 普段はあまり自分の部署から出ない穂香だが、目の前の男の名前は知っている。
 否、この会社で彼を知らない人間はいないだろう。
 月宮瑞貴(つきみやみずき)。
 ユウェル・ツキミヤの花形であるデザイン部の部長で、精鋭ぞろいのデザイナーたちの中でも天才と誉れ高い男だ。
 そしてなにより、彼は創業者一族――現社長の長男でもある。

「……君は……」

「あの、月宮部長?」

 きょとんと目をまるくした穂香を、瑞貴は何度も顔を寄せては離して見つめている。
 社内でも人気が高い瑞貴は、どこか日本人離れした顔立ちをしている。大きな目も、スッと通った鼻梁も、まるで人形のようだった。

「エグランティーナ」

「え? ……えぐ、なんですか?」

「俺が……俺が探してたのは君だ!」

 いきなり目の色を変えた瑞貴は、穂香の肩を強くつかんだ。
 鈍い痛みが体に走る。瑞貴は穂香の肩をつかんだまま、彼女の頬に顔を寄せた。

「な、なんなんですか……部長!」

「いいね、その反応。あんまり男慣れしてない感じ。メイクも薄いし、香水とかはつけてないの?」

 矢継ぎ早な質問が顔のすぐ横で繰り返され、穂香はくっと息を詰めた。
 男性なのに甘い香りがする。男性用の香水ではないほのかな香りに、穂香の心臓は意図せず高鳴り続けていた。

「あの、月宮部長――すいません、離れていただけますかっ」

「おっと、ごめんごめん。このところずっと図案と向き合いっぱなしだったからさ」

 瑞貴の手が肩から離れる。
 しかし穂香がほっとしたのもつかの間、淡くさわやかだった香りが急に距離を詰められて濃密になる。

「でも、君……すごく理想的なんだ。俺が描いていた『エグランティーナ』のモデルそのものなんだよ」

「――んぅ……!」

 詰められた距離が一気にゼロになる。
 最初、穂香は自分がなにをされているのかがわからなかった。けれどふさがれた唇と、その内側で歯列をなぞる舌の感触に体があわ立つ。薄暗がりの階段、重なった影はしばらく離れることがなかった。くちゅ、と音を立てて離れた舌と唇に、思わず穂香は声を上げる。

「な、なに――月宮部長、やめてください!」

 そう言って思わず瑞貴を突き飛ばしてから、穂香の顔は一気に青ざめた。

「あ、も、申し訳ありません……!」

 部署は違えど彼は上司で、それも創業者一族の人間だ。明日には自分のデスクが会社から消えているかもしれない。あわてて頭を下げると、瑞貴はそれを気にしたふうにもなくほほえんでいた。

「暗くてもわかる。顔が真っ赤だ……うん、いいよ。もっとその表情を見せて? 固い蕾が花咲く瞬間を見たいんだ」

 困惑と羞恥でこわばった穂香の体を抱きしめて、瑞貴はそのつむじにキスを落とした。
 それから唇は耳、頬、そして首――ときおりスーツを乱しながら、より体の中心へと下っていく。

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宝石王子の溺愛ビジュー

宝石王子の溺愛ビジュー

著  者
沙布らぶ
イラスト
中田恵
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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