異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません[1]

むしゃくしゃしてやった。反省はしている。
第2回

むしゃくしゃしてやった。反省はしている。

異世界で奴隷になりましたが
2016/10/31公開
「あはは、お兄さん、男相手でも興奮しちゃうんだー。ねぇ、見える? ここ、すごいよ?」

「黙れ、クソガキ……!」

 少年の華奢な手がダグラスの陰茎を握り、乱雑に上下する。
 決して巧みではないその動きにも昂ぶりを見せる青年の分身を眺めて、少年はせせら嗤う。

「あ? むしろ男が好きな感じ? こんな乱暴にされて悦びっぱなしとか、素質あるよね」

 両手をうしろ手に枷で拘束され、ひざのあいだに入り込まれた状態では少年を蹴り飛ばすこともできない。
 上半身を壁にもたせかけて歯を食いしばって耐えていると、少年が片手でダグラスのモノをしごきあげながら空いた左手で服をめくり、腹筋をやわやわとなでる。
 態度とは裏腹にやわらかいその動きにダグラスの熱はいっそう昂ぶる。

「ふふ、すごく鍛えてるんだね。なのに、こんな貧弱な俺ひとり突き飛ばせないんだ」

 にまにまとこちらを見上げる黒い瞳にどんな悪態を吐いても、事態はいっこうに解決しないことだけはダグラスにも理解できた。

「……お前こそどうなんだ。そんなもん喜んで握って……とんだ変態野郎じゃねえか」

 それでも黙り込んでしまうのは癪だった。
 快感にもだえながらも、吐き捨てると少年の目が愉快そうに細まる。まるで機嫌のいい猫のようだと場違いな感想がうかんだ。
 それと同時に手淫のペースが一気に速まる。

「ぐ……ぅ……やめろ……!」

 遠くない絶頂の気配を感じ、反射的に拒絶する。

「はーい」

 あと一歩のところで白い手があっさりと離れていった。

「な……!?」

 軽い調子で行為を中止され、思わず驚きの声をもらす。
 その瞬間、絶頂を期待していた自分をいやがうえにも自覚し、深い絶望に落ちる。

「やめてあげたよ? 嬉しくないの?」

 こちらを笑いながら見る少年に、はめられたと気づくがもう遅い。
 何を言うべきかを見失ない、口をぱくぱくさせることしかできないダグラスに少年がいっそう深く微笑みかける。

「いやぁ、さすがにお兄さんがかわいそうだもんね。捕虜になって、男に触られてイっちゃうって、仲間に顔合わせられないよね」

 胸板に手を這わせ、さり気なく胸の飾りを冷たい指でかすめられ、意思に反して腰が揺らめく。

「やめてあげたいけど、お兄さんの『ここ』はぜんぜんやめてほしくなさそう。こういうの言動の不一致って言うんだよね」

 ねぇ、どっちを信じたらいい?

 小首を傾げて笑いながら、指先だけで陰茎をなぞるそのなまめかしさにめまいがする。
 少年が身を乗り出して耳元に顔を近づけてくる。
 それを拒む気力はもうないことを完璧に見抜かれているのだろう、首にかかる吐息にすら熱をあおられる現状だ。
 声変わりを迎えていない幼い声が吐息まじりにささやいてくる。

「ここにはいま、お兄さんと俺だけしかいないよ。仲間にも、敵にもお兄さんが何言ったってわからないさ。……ねぇ? どうしてほしい?」

 それを口に出してしまえば、もう戻れないだろう。
 だが熱に浮かされた脳では歯止めが効かず、ダグラスは口を開いた。


◇ ◇ ◇


 小鳥の鳴き声が聞こえる。
 今日も縄張り争いお疲れさまです。

「夢か……」

 私の朝は早い。
 愛玩奴隷として買い取られた私ではあるが、やっぱり人様に養われている身分には違いないので、できるかぎりの家事はさせてもらうことにしている。
 異世界に紛れこんでもう、6年くらいだろうか。
 学生時代のある日突然この世界に落っこちた私は、当然ながらパニックに陥った。日本とはあきらかに異質な街並みに、あちこちに書かれた見たこともない文字。さらに街行く人たちの言葉は日本語でも英語でもなかったんだから。それだけなら「海外かな?」と思えたかもしれないが、知らないはずの言語をなぜか理解できてしまうという人知を超えた現象に私の心は簡単に折れた。結局あっさりと奴隷商に捕獲されてしまい、貧相な身体と短い髪でざっくり男の子どもだと判断されて、砦で小間使いとして生きてきた。
 あとでわかったことだけど、子どもはすぐ死ぬから値段があまりつかないらしい。それでいい加減な感じであつかわれたみたい。
 5年ほどそこで働いていたけれど、ある日その砦が他国に攻め落とされてしまった。
そして主人を失った私たち奴隷は、戦利品として奴隷商にまとめて売り払われた。
 いくらか成長して女っぽくなってたらしい私は次の奴隷商には女だと看破され、愛玩奴隷として仕込まれた。
 愛玩奴隷ってのはつまり、“ご主人さま”をいろんな意味でお慰めしたりするのがおもな仕事の奴隷のことを指す。若い女はだいたいそういうあつかいを受けることが多いらしい。
 処女だと値段が高いだとかで、相手に行なう性技だけを教えられ競りに出され、そこで奇跡の再会を果たしたダグラスさんにお買い上げされてしまった。
 何が奇跡って、ダグラスさんは私が少年奴隷扱いだったときに陵辱し倒した人なんですよ。
 理由はまた今度機会がありましたら。
 あのときほど、こっそり読んでたエロ小説たちが役に立ったことはなかったね。
 おませさんな私バンザイ。
 そんな少年奴隷を死ぬほど憎んでいてもおかしくないダグラスさんが私を買い取ったときには人生終了だと思いました。
 仕返しにとんでもない目に遭わされるのかと危惧したのもつかのま。
 ダグラスさん、どうやら私のことを覚えていない。
 というか気づいていない。
 そのうえ、不能。
 それが悩みで愛玩奴隷(つまり私)を買ってみたらしいけど、回復の兆しはいっこうに見えない。
 これを奇跡と言わずなんと言うだろうか。
 私は“愛玩奴隷なのに処女”という謎のステータスを持ちながら、この世界で生きていくことにします。
「いい奴隷なら、いいところでいいあつかいが受けられるから、せいぜい頑張るんだな」とは私を売っぱらった奴隷商の言葉だ。

「ダグラスさま、おはようございます」

「おはようチカ。今日も早いな」

 私から1時間ほど遅く、ダグラスさんが私室から出てくる。
 じつはそれよりも前に起きてるらしいんだけど、こちらの準備が整うまで部屋で待っててくれてるようだ。
 いい人なんだよなぁ、本当に。

「今日はオムレツを作ってみました」

「おお、それはいい」

 さわやかな笑顔を浮かべながら、大きな手で私の頭をなでてくれる。
 いかつい系イケメンの笑顔ごちそうさまです。
 夜は自分の不能に悩んで暗い顔ばかりなので、朝、この笑顔を見るとホッとする。
 異世界に来て、奴隷の身分に落ちて不安でいっぱいだった私を養ってくれている彼には本当に感謝している。
 無理強いをされることもないし、愛玩奴隷としては望外の待遇をされている。
 できればこの暮らしをずっと続けていきたいので、できればダグラスさんには何も気づかないまま不能でいていただきたい。
 いやほんと、お願いします。

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異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません[2]
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異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません[1]

異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません[1]

著  者
鳥下ビニール
イラスト
国原
レーベル
eロマンスロイヤル
価  格
92 円(税抜)
シリーズ
異世界で奴隷になりましたが
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