淫魔に捧げた肉体

[1-3]淫夢
第3回

[1-3]淫夢

2017/04/02公開
「ほら、ぶっとぶほど感じるだろう? もう紗季は俺じゃなきゃダメな体なんだ。俺だけが紗季を満足させてやれる。これが好きだろう? たまらないだろう?」

 彼女は何度もうなずいた。そのたびに涙が目尻から飛び散る。口を開けたまま快感に震えているので、もうあえぎ声さえ出ないまま恍惚とし、官能の海の中に沈んでいた。息さえするのを忘れていたに違いない。
 しだいに朦朧とし始める。
 涙でにじむ瞳で彼を見る。彼の視線とぶつかった。
 その途端彼が体を震わせた。熱いほとばしりを受けたそのとき、彼の瞳が黄金色に輝いた。
 彼女は息を飲み、その瞳に魅入られる。

「あっ、ふぅんっ……ああっ」

 溶けてしまいそうなほどの熱に包まれ、全身から汗を吹き散らせる。もうどちらの汗かもわからないほどだ。彼女は彼の光る金色の瞳に魅入られ恍惚としていた。
 彼の顔が徐々に薄くなっていく。自分の視界がフェードアウトしているのだろうかと思いながらも彼の顔を凝視する。それはさらに薄くなり、しまいには消えてしまいそうになる。

「ああ、と、ときお――っ」

 彼女は恐怖に駆られ彼の名を叫んだ。抱きしめられた感触はたしかだったのにいまは何もない。
 何度も何度も彼女は彼の名を叫んだ。
 喉が渇き、叫んだことでひりひりする。
 泣きじゃくりながら彼の名を呼ぶ。

「仁雄(ときお)――っ!」

 叫んだと同時に紗季はベッドから勢いよく飛び跳ねるように上半身を起こしていた。意識が覚醒し、混乱する。
 ぜいぜいと荒い息をしていて、全身汗びっしょりだった。
 まだ寝ぼけている状態で頭がはっきりしない。目に映っているのは見慣れた自分のベッドルームだった。

「あ……、あたし。また、夢を……」

 ここのところ立て続けに夢に見る彼との過去のセックス。そうこれは、過去に彼としていた激しく背徳的なセックスだ。
 下着が愛液で濡れているのは確認しなくてもわかっていた。

「ああ。仁雄……」

 紗季は思わず泣きだした。
 体を震わせ泣きじゃくる。体は彼から教え込まれた特殊なセックスを求めうずいている。心は彼が恋しくてじくじく傷んでいる。
 身を引き裂かれるほど彼が恋しい。

「仁雄、会いたい……仁雄……」

 仁雄とは職場恋愛だった。と言っても、同じ病院で働いているが、彼は将来有望な医者で紗季は受付事務だ。
 付き合って3年。彼は紗季にプロポーズしたあと、結婚する前にどうしても国境なき医師団に参加したいと言って、南米ボリビアに渡った。
 1年の契約で飛び立ち、半年になろうとしていた。
 1年なんてすぐ、あっという間に終わってしまう。そう思っていた。しかし、たった半年で、こんなふうに自分が彼との淫夢に夜ごと乱されることになろうとは想像もしていなかった。それほど彼が紗季に与えた影響は大きかったといえる。
 ベッドの上に手をすべらせる。シーツはしっとりと湿り、下腹部のあたりはシミになるほど濡れていた。
 まるで本当に彼とセックスしていたみたいなありさまだ。
 紗季はやるせない気持ちが押し寄せてきた。
 床に脚をつけ立ち上がると、雲の上を歩いているように力が入らない。全身が気だるく、まるで激しい情事のあとのようだ。
 淫夢を見ただけでこんなふうになるのだろうか? と、疑問が脳裏をかすめるが、その疑問自体バカバカしいものだと我に返り自嘲した。

 ――あたしったら、バカみたい。

 紗季は気を取り直してバスルームへ向かった。

[泉怜奈 作品一覧]
女王さまは下僕に溺れる SとMの淫楽の鍵
ヴァイオリニストの潤愛 乙女は極上の快楽に喘ぐ
愛執の忘却 囚われた身体と消せない淫欲
再会の罠 狂おしく抱かれ乱されて

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淫魔に捧げた肉体

淫魔に捧げた肉体

著  者
泉怜奈
イラスト
純友良幸
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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