淫魔に捧げた肉体

[5-2]想起
第22回

[5-2]想起

2017/04/21 ~ 2017/04/28 まで公開
「おまえが愛する女を我に与えるならその命は救ってやろう」

 ――な、なにを言ってる。誰のことだ?

「おまえの脳裏によぎったその女のことだ」

 ――紗季……!? 紗季に手を出すな。ダメだ、紗季に手を出すな――っ!

 腹の底から叫ぶがまったく自分の耳には届かない。この男の声は聞こえてくるのに、いったいどうして自分の声が耳に届かないのか理解不可能で、しだいに焦燥が募り追い込まれていく。

「我はその女が欲しい。おまえが大事にしているその女。しかしおまえの記憶は邪魔になるだけだ。消してやろう。心配ない、おまえはまたその女に会えるだろう」

 ――な、なにをするんだ! や、やめろ――っ

 叫び声が耳をつんざき、仁雄は飛び上がるように起き上った。
 心臓がありえないほど早鐘を打ち、息が上がっている。血圧が急激に上がったせいでめまいがした。目をこらしてみるとここは部屋の中だ。
 自分の体を見ると裸だった。怪我ひとつしていない。
 いまのは……夢だった。
 いや、現実に起こったことが夢に現われたのだ。

 ――俺は、すべてを思い出した。

 夢の中のできごとは現実に起こったことだ。そしてあの声、あの声の男はいったい誰だったんだ? 

「う~ん」

 眠そうな声で寝返りを打った紗季が気だるげに体を起こした。仁雄の背中に抱き着くようにして肌を密着させてくる。
 仁雄は彼女のほうへ振り向いた。

「紗季……記憶が戻ったよ」

 紗季は「ふふっ」と笑うと頭を横にして仁雄の顔をのぞき込んだ。
 はっと息を飲む。妖艶にほほ笑む紗季の瞳がゴールドに輝いたように見えたのだ。あのときの光と同じゴールドに。

「紗季?」

 注意深く彼女を観察する。まるで酩酊しているようにうつろな瞳で、ふらふらと体を揺らしている。

「んん、ねぇ仁雄……」

 仁雄の腕をつかむとむさぼるように唇を重ねてきた。
 彼女の細い腰に両手を回し、自分の上に座らせた。全裸の彼女の肌が仁雄の肌にこすれると、一瞬で欲望がふくらみ興奮をあおられる。舌を絡ませながら唾液を交換し、唇に吸いついたりなめたりを繰り返す。彼女の背中をなでながらぎゅっと抱きしめると、乳房の硬い果実が肌にこすれ、その感触に欲情が増していく。腰を揺らすと、力がみなぎり始めた欲望が女の濡れた秘部にこすられる。彼女も腰を揺らし、感じる場所に的確に当たるように導いているようだ。 
 仁雄のSの本能がしだいに目覚め始めた。
 そう自分は彼女をMとして愛しそして支配していたのだ。
 そのすべてを思い出した。

「うふぅ……んんっ」

 彼女の甘い声を聞けば聞くほど、支配欲が大きくなってくる。

「ああ、紗季、全部思い出したんだ。俺たちがどんなことをしていたのかも。紗季、おまえは俺のものだ」

 彼女の腕を拘束しようと両腕に手をかけたその一瞬でその腕を彼女にとられ、押し倒された。仁雄の上にまたがったまま、両腕を押さえつけられる。大柄な仁雄が本気で抵抗してもびくともしないほど強い力に目を見開いた。

「紗季……いったい……どうなってるんだ?」

 動揺する仁雄の目をのぞき込むようにして紗季は妖艶な笑みを向けたあと、彼の唇を舌でくすぐるように愛撫しながら腰をゆるゆると動かせる。
 硬さが増した男の欲望は熱く濡れた女の泉にこすりつけられたまらなく気持ちがいい。
 巧みな愛撫を繰り返す紗季により仁雄はしだいに支配される快楽に身をゆだねていた。

[泉怜奈 作品一覧]
女王さまは下僕に溺れる SとMの淫楽の鍵
ヴァイオリニストの潤愛 乙女は極上の快楽に喘ぐ
愛執の忘却 囚われた身体と消せない淫欲
再会の罠 狂おしく抱かれ乱されて

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淫魔に捧げた肉体

淫魔に捧げた肉体

著  者
泉怜奈
イラスト
純友良幸
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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