触れられずの姫と執愛の魔術師

[1ー2]監禁
第2回

[1ー2]監禁

2017/05/01公開
「僕の呪術のおかげで、僕以外はこうやって君に触れることができないのだからね」

 以前は国いちばんと誉れ高い魔術師だったアルフレッドによってクリスティーヌは、アルフレッド以外の男は彼女に触れることができないという呪いをかけられていたのだった。
 アルフレッドはそのために国を追い出され、いまでは闇の魔術師と恐れられる存在になっていたのだが、彼の様子を見るかぎり、そんなことはつゆほども気にしていないのだろう。

「君が幼いころに婚約していたドリュモア王国の王子だけは心配だったけど……」

「エドワードのことは言わないで!」

 古い傷をえぐられた心地がしてアルフレッドをにらみつけるクリスティーヌだったが、彼から立ちのぼる怒りに満ちた感情に気圧され、すぐに口をつぐんだ。

「君の口からほかの男の名前が出るなんてね――クリスティーヌ、おしおきだよ」

 アルフレッドの瞳にほの暗い光が宿り、クリスティーヌは現実から目を閉ざしたのであった。


◇ ◇ ◇


 幼いころ、クリスティーヌ・オルコットはとても活発な少女だった。侍女たちの目を盗んでは城を出てあちこちにひとりで遊びに行っていたほどで、父王はそんなおてんば娘に常々頭を悩ませていたという。
 そんな折り、クリスティーヌが町のはずれで出会ったのが、子どもながらに高い魔力を有するアルフレッド・レイだったのである。

『あなたが有名な魔術師ね? お城でも評判なのよ』

 無邪気に笑うクリスティーヌを前に、川縁で薬草をつんでいたアルフレッドは流れるような黒髪からのぞく両目を大きく見開いた。

『……君は、オルコット家の王女――クリスティーヌさま』

 西に傾きつつある陽が、威風堂々と立っている小さなクリスティーヌを明るく照らした。

『まあ、私をご存じなの? 光栄だわ』

 つんと顎を上向かせるクリスティーヌを見て、アルフレッドはなぜか意地悪したくなった。

『知らない民などいないでしょう。国いちばんのおてんば姫を』

『失礼ね!』

 アルフレッドが思ったとおり、クリスティーヌは腰に手を当てて怒りを表現したが、その姿さえまるで西洋人形を思わせる美しさだということに、本人だけが気づいていなかった。
 太陽のように輝く金色の巻き毛に、澄みきった青空のような碧眼を持つクリスティーヌは、本人のあずかり知らぬところで国いちばんの美貌と謳われている。
 だからアルフレッドは思わず、くすりと笑みを漏らしていた。

『ぜんぜん怖くないですよ、王女さま』

 今度はかあっと顔を赤くするクリスティーヌを見て、ころころと表情の変わる少女だとアルフレッドは思った。そしてそんな王女に抱いた感情が恋であることに、やがて気づいていくことになる。
 アルフレッドの思惑も知らず、クリスティーヌは親しげに近づいてきた。

『ねえ、その“王女さま”っていうのやめてくれない? 呼び捨てでかまわないし、敬語じゃなくていいのよ』

『……どうして?』

 この美しい少女が出会ったばかりの自分になぜそうまでしてくれるのか、アルフレッドは本気でわからなかった。するとクリスティーヌは思わぬことを口にする。

『私、友だちがいないの』

 クリスティーヌがしゅんとうなだれる。

『皆、王女だからってまともに相手にしてくれなくて……』

 積極的に町に降りているのに誰も友だちになろうとしてくれないのだと、クリスティーヌはつらつらと話したあと、やがてアルフレッドに向き直った。

『でも、あなたは違うわ』

『どこが?』

 アルフレッドの胸の鼓動は高鳴っていた。そして彼がクリスティーヌに執愛するようになる理由が、このときに訪れた。

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窓際係長は私を好きすぎて出世できない

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触れられずの姫と執愛の魔術師

触れられずの姫と執愛の魔術師

著  者
御子柴くれは
イラスト
風凪ひかり
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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