触れられずの姫と執愛の魔術師

[3-3]別離
第15回

[3-3]別離

2017/05/18 ~ 2017/05/25 まで公開
 無事にカミュゼリア王国の王都に戻ってきたクリスティーヌを、父王は泣いて喜んで抱きしめてくれた。さらに忌まわしい触れられずの呪いが解けたことを祝い、城をあげて盛大な宴が催されることとなった。
 ドリュモア王国から単身クリスティーヌ救出作戦に加わったエドワードは、父王により正式にクリスティーヌの婚約者だと認められ、その夜はいつにないにぎわいに満ちていた。
 どこに行っても解呪を祝う人々に取り囲まれるクリスティーヌは、熱気を冷まそうとひとり客間へと戻っていた。
 本来であれば城のはずれの尖塔が自室だったのだが、もう閉じこもる必要はないのだと父王に説得され、侍女たちが急ごしらえした広い客間がこの日のクリスティーヌの寝床となるのだという。
 広い部屋のせいか心が落ち着かず室内をうろうろと歩いていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
 クリスティーヌがノブを回すや否や、扉は勝手に開いて来訪者の姿を明るく照らし出した。

「クリスティーヌ、どこに行ったのかと心配しました」

「まあ、エドワード!」

 驚くクリスティーヌに、エドワードは人好きのするほほえみを浮かべた。

「今日はあなたが主役なんです。皆、あなたを捜していますよ」

「わかっているのだけれど……ちょっと疲れてしまったの」

 ごめんなさいと、そのまま扉を閉めようとするクリスティーヌだったが、エドワードが自然と身体を割り込ませてきたため、それはかなわなかった。
 しかたなくエドワードを部屋に入れることになり、内心戸惑うクリスティーヌ。本当はひとり、森の館に残してきたアルフレッドのことを考えていたかったのだ。アルフレッドがいまどうしているのか、気になってしかたがなかった。
 エドワードのほうはひょうひょうとしていて、広い客間のあちこちを見て回っている。やがて彼はベッドに腰を落ち着けると、クリスティーヌを手招きしてきた。

「じつはあなたとふたりきりで話したいことがあったのです」

「そ、そうだったの……なにかしら?」

 つい警戒心から扉の前で動けずにいたクリスティーヌを見て、エドワードが苦笑する。

「あなたは僕の婚約者ですよ? 隣に座ることもためらうのですか?」

「……そうね」

 たしかになにを警戒する必要があるのだろうと、クリスティーヌは自分のことながら不思議に思う。幼いころにエドワードの姿絵を見て以来、こうして婚約する日を心待ちにしていたではないかと己に言い聞かせ、クリスティーヌはやけに遠く感じるベッドまで歩いていった。
 人ひとり分の距離を空けて腰かけたクリスティーヌにやはり苦笑して、エドワードは話し始めた。

「先ほど早馬が到着したのですが、私の父王もまたあなたとの婚約を許してくれたそうです」

「本当に?」

「ええ。あなたの呪いが解けたことをすぐに報告させたんですよ」

 これで晴れて婚約が正式に成立する――そう思うと、なぜかクリスティーヌの心はどんよりとくもるのであった。
 だからなにも返すことができず、ただひざの上で組んだ自身の両手を見つめていた。
 そんなクリスティーヌの態度から察したのか、エドワードが不安げに言葉を継ぐ。

「気に入りませんか?」

「まさか」

 クリスティーヌは慌ててぶんぶんと両手を振ってみせたのだが、エドワードは信じていないらしい。これまできらきらと輝いていた彼の瞳が、すっと沈んでいくのがわかった。

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窓際係長は私を好きすぎて出世できない

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触れられずの姫と執愛の魔術師

触れられずの姫と執愛の魔術師

著  者
御子柴くれは
イラスト
風凪ひかり
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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