ロゼリア姫は逃げられない。[1]

[4-2]それではご褒美をいただきます。
第22回

[4-2]それではご褒美をいただきます。

ロゼリア姫は逃げられない。
2017/05/19 ~ 2017/05/26 まで公開
「――そもそも、なんであなたはお茶会に呼ばれないのよ」

 かねてよりの疑問を、ロゼリアは当の本人にぶつけてみる。

「次期宰相にほぼ確定していて、家柄も血筋も正しくて、当代一の天才と言われているライフィール・ジョシュアが呼ばれないなんておかしいでしょう。少なくても、この数日集まってきた顔だけのボンクラどもに比べたら可能性は大ありだと思うけど?」

 自分で言っておいてなんだが、本当に不思議でならない。
 もし自分が母王妃の立場であれば、女王となる娘のために、もっとも賢い人間を婿としてあてがうことだろう。
 それをしない母の真意はどこにあるのか……とまじめに考えたロゼリアだが、返ってきたライフィールの答えに思わず脱力した。

「それはおそらく、王妃さまが面食いのためでしょう。王妃さまは、それはそれは美しいものが大好きですから。伴侶として愛しているのは国王陛下おひとりですが、身のまわりの世話はすべて美少年か男装侍女にやらせている徹底ぶりです。それを考えれば僕なんか眼中に入りませんよ」

「……」

 そうなのだ。
 民衆には知られていないが(知られたら事だが)、王妃は無類の美少年好きなのである。
 見目麗しい少年が小姓として城に上がると、すぐに自分付きに引っぱってきて、絵画か彫像でも鑑賞しているように、隅から隅まで愛でまくる。
 さすがに入浴や着替えの世話をさせては問題があるので、そこは『男装の麗人』という言葉がぴったりの女たちを集めて、やはり隅から隅まで愛でまくっているのだ。
 王妃にぞっこんな国王は、若いころこそ、王妃のそんな性癖を知ってがく然としたそうだが、身のうちから湧き起こる大いなる愛の力によって「そんな趣味を持つあなたもすてきだ!!」と悟りを開き、堂々とプロポーズしたらしい。
 この話を聞くたび、愛ってなんなんだ、とロゼリアは天をあおぎたくなる。当人同士が納得しているのだから、べつに口をさしはさむことではないのだけれど。
 ……まぁ、それは置いておいて。
 たしかに、あの席に集まった男たちは、顔だけはよかった。
 好みではない顔も多くいたが、いわゆるイケメンであることは間違いない青年ばかり。
 ちらほら少年が混ざっていたのには目をつむるとして、母の趣味が選考に大いに反映されていたのはあきらかだった。

「その点、僕はこのとおり地味ですから。王妃さまはおそらく、僕の顔をよくご覧になったこともないと思いますよ」

 そう自虐するライフィールは、たしかに地味だ。
 伸ばしっぱなしの前髪、申し訳程度にくしを入れただけの髪。
 薄くもなく濃くもない肌。全体的にちょっとなよっとした感じの体つき。
 おまけに衣服までゆるい印象を与える目立たないもので、宮廷人と言うより、そのへんの役人と言ったほうがしっくりくる風体をしていた。

「どうしてそんな地味な格好ばかりしているのよ。その前髪を切るか上げるなりして、もっとぱりっとした服を着れば、あなたもそうとう男前になるでしょうに」

 長い前髪の向こうに隠れるライフィールの顔をうかがいつつ、ロゼリアは尋ねる。
 幸か不幸か、ライフィールと顔を(というか唇を)合わせる機会が多いロゼリアは、彼がかなり端整な顔立ちをしていることを知っていた。
 彼の亡き母親もたいそうな美人だったというし、その気になればいくらでも目立てるはずなのだが。

「目立つのは嫌いなんですよ。ただでさえ神童だ、天才だともてはやされて、幼いころはそこそこ苦労したんです。これ以上あれこれ言われるのは心底勘弁、って感じで」

 血のにじむような努力をし、頑張りすぎたあげくに発熱して、それでも完璧で美しい王女として目立ちまくりたいロゼリアとは、まるで正反対の主張である。

「つまらない男ね。そんなんだから……」

 彼女のひとりもいないのよ、と言おうとして、ロゼリアは寸前で口をつぐんだ。
 なぜだか、それを言ってはいけないような気がしたので。

「そんなんだから?」

 しかしゆっくり歩み寄ってきたライフィールは、続きをうながすようにほほえんでみせる。前髪の隙間からキラキラした瞳がこちらを見つめていた。
 ロゼリアはぷいっとそっぽを向く。

「なんでもないわ」

「なんでも、というお顔はしていらっしゃらないですがね」

 ロゼリアのすべすべした頬を、ライフィールの指先がちょんっとつっつく。
 ロゼリアはギロリと相手をにらみつけた。

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ロゼリア姫は逃げられない。[1]

ロゼリア姫は逃げられない。[1]

著  者
佐倉紫
イラスト
城之内寧々
レーベル
eロマンスロイヤル
価  格
92 円(税抜)
シリーズ
ロゼリア姫は逃げられない。
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