ドSな上司に調教されています ひとりエッチは禁止デス

ひとり遊びにはご注意を
第1回

ひとり遊びにはご注意を

2017/07/28公開
 しんと静まり返ったオフィス内に、淫らな音が響いている。
 濡れた音、かすかだけれど荒い息遣い。
 けれどこの場にいるのは紺野麻衣ただひとりだ。
 残業を終えた麻衣は、帰宅することなくイスに座り自らの身体に手を這わせていた。座っているのは自席ではなく、課長――川瀬薫のイスだ。麻衣が川瀬薫課長に片想いをしてもうすぐ一年になる。
「……ん、……ハ」
 服の上から秘部をこするだけでは足りず、彼にされていることを想像しながら下着の中に指を入れて、すでに湿っている自分の秘部を直接さわった。タイトスカートからシャツを引き抜き、シャツの下から手を入れて、胸もさわる。
 目をつむって、川瀬にされていることを想像した。
 彼はどういうふうに女の人を抱くのだろう。スマートな物腰と紳士な態度からはなかなか想像しにくいが、きっとやさしく導いてくれるのだろう。甘く唇を食み、ゆっくりと舌を絡めてくれるはずだ。それからていねいに服のボタンをはずして、肌にふれていく。
 誠実そうな川瀬が自分の淫らな場所にふれていると想像するだけで、身体の芯が熱くなる。
 一ヵ月ほど前から、ハマっている遊びだ。
 きっかけはいつだったか――。
 残業をしていた夜、ふと気づいたらオフィスにひとりきりになっていた。
 麻衣の会社では、最近残業をなくすために定時内で仕事を収める取り組みが行《おこ》なわれている。みんなできるだけ残業せずに退勤するように心がけているが、仕事量が変わるわけでもなく残業をしないわけにはいかないことも多い。それは麻衣も例外ではない。
 その日残業をしているのは麻衣ひとりだけ。その状況が麻衣を大胆にしたのだろう。麻衣は川瀬のイスに座り、彼のイスから見える風景を楽しんでいた。
 麻衣とって川瀬は“手の届かない存在”だ。
 32歳という若さで課長になり、上司や部下からの信頼は厚く、バリバリ仕事をこなしている。穏やかでやさしい性格と王子さまのような気品を感じさせる容姿で、女性からの人気も高かった。うわさ好きの社員から聞いたところによると、どうやらモデル並みにきれいな女性と付き合っているらしく、結婚間近らしい。
 そんな相手と自分が付き合えるなんて考えていない。
 麻衣は美人でもないし、モデルのようにスタイルがいいわけでもない、平凡な女だ。彼と付き合えると想像することすら失礼な気がした。だからずっと片想いをしている。
「……ん、……ハ」
 最初のうちは彼のイスに座っているだけで満足していたのだが、それだけではもの足りなくなり、川瀬の顔を思い出しながら彼に抱かれることを想像して、自分の胸や秘部をいじって達してしまった。
 それから――オフィスでのひとり遊びにハマッている。
 だめだとわかっていても手はとまらない。
 ひとり遊びの回数を重ねるごとに麻衣は大胆になっていた。
 静かなオフィスに自分の淫らな水音だけが響く背徳感が、麻衣の興奮をあおる。
 川瀬は女の人を抱いているとき、どんな顔をしているんだろう。そればかりを考えていた。
「……かわ、せ……課長……っ」
 甘いわななきを予感して、高ぶった麻衣は川瀬の名を呼んだ。そうすると、さらに興奮する気がした――が、誰もいないはずのオフィスに足音が響き、麻衣は現実へと引き戻された。
(……誰か、いる!?)
 麻衣はあわてて乱れた服を直す。
 けれどそれも遅かった。
「っ!」
 現われた人物は、いままさに名前を呼んだ人。
「……紺野さん? まだ帰ってなかったのですか」
「あ、あの……っ」
 最初はいつもの穏やかな眼差しをしていたのに、麻衣の乱れた服を見て表情を変えた。
「……私の席で、何を」
 川瀬は驚きよりも不思議さに満ちた目をして麻衣を見つめている。残業中であろうとも、そもそも麻衣が川瀬の席に座っていること自体がおかしい。それに加えて麻衣の服は乱れている。よほどに鈍感な人間でなければ、服がなぜ乱れているのか、すぐに察しがつくだろう。言い訳のしようもない状況だ。
「……っ、あ」
 麻衣は何も言うことができずに口をぱくぱくと動かすばかりだ。川瀬も目を見開いたまま動かない。
 今日、川瀬はクライアント先で打ち合わせのあと、直帰の予定だったはずだ。なのに、どうして。
「す、すみません……私っ」
 混乱しすぎていて、何を言えばいいか麻衣にはわからなかった。
 罪悪感や羞恥心と一緒に涙がぽろぽろとこぼれる。
 何度も何度も謝った。
 「紺野さん、落ち着いて」
「すみません、すみません……っ」
「……紺野さん」
 川瀬は、それ以上なにも言わずに、泣いている麻衣の頭をずっとなでていた。
 とんでもないものを見せてしまったのに、川瀬はやさしくて、逆につらかった。

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ドSな上司に調教されています ひとりエッチは禁止デス

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著  者
春密まつり
イラスト
広瀬コウ
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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