愚かしいと思うだろう。
 このうえなく愚かしいと。
 君は言うだろう。忘れてくれ、と。

 何度でも無情に繰り返す、その仕組みの中で。

 深い絶望しかないとわかっていても。
 未来が欠片もないとわかっていても。


 ────それでもなぜだろうか。

 僕はどうしても、君を愛してしまうんだ。



◇ ◇ ◇



 ────ああ、食べられる。
 ベッドの上でのしかかられ、四肢を四肢で拘束されながら、私は思う。
 ほどよい筋肉でおおわれた腕は、私を逃さんとする檻のようだ。
 何度も繰り返したはずの、慣れたはずのこの行為の中で、なぜか捕われ押し倒されるこの瞬間だけは、いまだに緊張してしまう。
 すぐそばにある、思わず息を飲んでしまうほど美しい彼の目は、欲望を隠さずに私を見つめる。
 そして、そこにあるわずかな怯え。
「……大丈夫よ」
 安心させるように微笑み、そう言い聞かせれば、彼は手の拘束を解いてくれる。
 私は自由になった手を、なめらかな彼の背中に這わせた。
 やがて触れるだけのキスが落ちてくる。目をつむってやわらかな感触を楽しむ。
 そう、怯える必要などないのだ。私のすべては何もかも彼のものなのだから。

 ────もう、ずっとずっと昔から。

 私の唇を、彼の舌がねっとりとなめる。応えるように唇を薄く開ければ、性急に口腔内に舌が入り込む。
 思わずすくむ私の舌を絡め取り、強く吸い上げて、自らの口腔内へと導く。
 そして、互いのやわらかで敏感な粘膜を蹂躙し合う。
「んっ! ……はっ」
 呼吸が苦しくて、くぐもった声が漏れる。口角から受け止めきれなかった唾液がこぼれ落ちた。
 きゅっと胸が締めつけられる。他人を自分の内側へ受け入れるという行為は、なぜこんなにもせつなく、苦しいのだろう。
 徐々に体温が上がり、意識がぼやけ出す。私の中が潤んでいく。
 彼の手が、慣れた手つきで私の身体を這い回る。彼はもう、私よりも私の身体のことを知っている。
 どこをどんなふうに触れば、どんな反応を示すのか。
「あっ……あ……!」
 声が漏れ出す。もっともっととねだるように。
 強く胸の頂きをつまれれば、腰が跳ねる。本来なら痛いはずの強さなのに、発情した身体と心は、それを快感へと変換してしまう。
 やがて下肢へと伸ばされた指によって、脚の隙間にある敏感な芽を嬲られ、ドロドロに溶けた胎内を暴かれる。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が私の耳をも犯し、羞恥がさらに興奮を煽る。
 痛がゆいような、どうにかしたいのにどうにもできない焦燥が、どんどん身体に蓄積されていく。
「おね、がい……」
 耐えがたくなって、助けてほしくて、解放を求めた私の懇願に、彼から蕩けるような微笑みが返される。それからキスを顔じゅうに落とされて。
「あああっ────!!」
 そして、一気に彼の熱に貫かれ、私は背中をのけ反らせた。
 限界まで張り詰められていた快楽が弾け、全身に巡る。
「あっ! んあ! 待って、まだ……!」
 達したばかりだというのに、脈打つ敏感な胎内を容赦なく激しく抽送され、絶頂が長く続き降りてこられない。
「ひぁぁっ! だめ……! 壊れちゃう……!」
 そんな私のお願いは、嬉しそうに笑う彼にまったく聞き届けられず、彼の手はさらに私の身体を隅々まで愛撫し、蹂躙し、追い詰めていく。
 潤む視界の中で、かすむ意識の中で、幼きころの彼が頭をちらつく。
 あの小さな少年が、気がつけば大人の男になり。いま、こうして私をむさぼり食らっている。
 そのことが不思議で。どこか背徳的で。
 やがて吐き出された彼の熱を内側に感じながら、私は目を閉じる。
 そして、かつての懐かしい日々に、思いを馳せた。

 そう、初めて出会ったとき、彼はまだ────。

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私の心臓と破綻した神のプログラムについて[1]

私の心臓と破綻した神のプログラムについて[1]プロポーズは婚姻可能年齢になってからでお願いします

著  者
クレイン
イラスト
あめふれ
レーベル
eロマンスロイヤル
価  格
92 円(税抜)
シリーズ
神のプログラム
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