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プロローグ 重度のブラコンをこじらせて
第1回

プロローグ 重度のブラコンをこじらせて

2018/05/31公開
 この半年。わたしは抜け殻のようになっていた。
 ぼんやりしてみたり、ことあるごとに落ち込んで泣いてみたり。
 泣いてもしかたがないし、泣くなんておかしいし、迷惑な話だということも重々自覚していたので、わたしはこのことを表に出すことはなかったが、陰でこっそり涙をこぼしまくっていた。
 最初はそれなりに慰めたりしてくれていた母も、次第にあきれて相手にしてくれなくなった。

 そりゃあ、そうだ。
 いい年をして、大好きなお兄ちゃんが結婚してしまったからなんていう理由で妹が泣いていたら、客観的に考えてウザいことこの上ないもの。

 半年前、兄・弘樹が結婚した。
 結婚式の日、わたしは高熱を出して倒れ、なんと結婚式にも披露宴にも参加できなくなってしまった。実の妹だというのに。
 兄と結婚した彼女さんはとてもいい人で、兄の将来の幸せを確信し、お祝いの気持ちでいっぱいになった。でも……。ブラコンというのはどうしようもないものだ。
 そういった気持ちとは別のところで、わたしは苦しくなってしまい、参ってしまったのだと思う。
 お祝いしなきゃいけない、兄を取られるなんて露ほども思っちゃいけない。いい年をして、こんな気持ちは幼い……自分を抑え込み続けたせいで、体調まで崩してしまった。
 物心ついたころから二歳年上の兄を慕い続けていた。いつもわたしを守ってくれた、優しくて強い兄。これがまた困ったことに顔もスタイルも最高で、頭もよくて優秀で、中高と野球少年だったから、いまでもスポーツマンで……。非の打ちどころがないのだ。そんな兄は、将来は父の経営する会社を継ぐ予定だが、いまは勉強も兼ねてほかの企業で働いている。
 こんな完璧な兄がいたらほかの男に目が行くはずもなく、わたしは今年二十七歳だけど男女交際の経験は一度もない。
 例外は……。中高と野球少年だった兄の試合を毎回応援しに行っていたころ、初恋……と呼べるほどではなかったかもしれないが、よくぶつかるチームの少年をちょっとカッコいいと思ったことがあるくらい。でも、そんなのは例外中の例外で、わたしはほぼ兄ひとすじ、両親も以前はそんなわたしを見ても目を細めるだけで、問題意識は持っていなかったようなのだが……。
 最近、雲行きが怪しくなってきた。

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著  者
乃村寧音
イラスト
中田恵
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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