堅物上司と淫らな撮影 秘蜜に濡れるランジェリー

堅物上司と淫らな撮影 [1]新入社員を襲うセクハラの洗礼
第1回

堅物上司と淫らな撮影 [1]新入社員を襲うセクハラの洗礼

2018/05/31公開
 その日は、美並真琴にとって、輝かしい社会人生活の記念すべき幕明けとなるはずだった。
 念願だった有名アパレルメーカーへの就職。建ち並ぶオフィスビルの中でもひときわ目立つ、その瀟洒な十三階建ての社屋の中で、流行の最先端の洋服たちに囲まれて、大好きなブランドの企画やデザインに関わる仕事ができる。
 女の子ならば誰もが憧れるに違いない華やかなOL生活が、今日からスタートするはずだった──のだが。

「美並さんは、『第三企画部』に配属ですので、地下一階になります」

 そう言われ、受付で渡された小さなメモを頼りにたどり着いた地下フロアのエレベーターホールで、真琴はぼう然と立ち尽くしていた。
 たった一階降りてきただけなのに、そこは地上の華やかなざわめきとはまったくの別世界のようにシンと静まりかえっていた。
 まるで地獄へと続く入口のような、長く薄暗い廊下は、窓がないせいかうっすらとカビ臭く、なんとなく空気がよどんでいるように感じられる。
「……なんか……イメージと違う……」
 受け入れがたい現実に戸惑いながら、おそるおそる奥のほうへと進んでいくと、段ボールや梱包材が廊下にまで雑然と積み上げられた資材庫のすぐ隣に『第三企画部』の扉があった。
「え? ……ホントにここ? ……なにかの間違いなんじゃないの?……」
 むしろ間違いであってほしいと心の奥で祈りながら、真琴はしかたなくその薄汚れたドアをおどおどとノックした。
 一瞬の沈黙のあと、返事もなくいきなり扉が開いた。ぬっと顔を出したのは、ひょろっと背が高く、眉間にシワを寄せた気難しそうな男性だった。手には段ボール箱を抱えている。険しい表情と無精ひげのせいで一瞬四十代後半の中年男性かと思ったが、よく見れば端正な顔立ちをしており、その肌ツヤから、実際は三十代半ばぐらいのように思われた。
「──何? いまから出るんだけど」
 男は警戒心の強いうさんくさそうな目で真琴をじろじろとにらみつけた。
「……あ……あの……私……新入社員の美並真琴です」
「……新入、社員?」
 男はまるでその言葉の意味が理解できないかのように、首をかしげて真琴の言葉をオウム返しした。
「は……はい」
「部署を間違えてんじゃない? ……うちに来るのは男子社員のはず──」
 男はぶつぶつ言いながら、真琴の手にしている書類をのぞきこんだ。
「ミナミ……マコト……。え? 何……マコトって……女だったのかよ……」
「えっ?」
「……あれほど人事に言ったのに……なんで女なんだよ」
 男があからさまに顔をしかめて舌打ちしたため、真琴は不快な気分になり、わざと大きめのせきばらいをしてから声を張って言い返した。
「──あ、あの! ……私が女だということで、何か不都合でも?──」
 ファッション業界ならば女性も生き生きと活躍できるだろうという思いもあってこの仕事を選んだのに、同じ職場にこのような封建的な考えを持った男がいるということが少なからずショックだった。
「いや……そういうことじゃなくて、うちの仕事、女には無理なんだよね。実際何人も辞めてるし」
「……でもそれって、これまでにも女性が配属されたことがあるってことですよね? どんな仕事かわかりませんが、私は、配属された以上しっかりやります」
 実際はフロアの雰囲気だけで腰が引けていた真琴だったが、男の決めつけたような言い方にカチンときてしまい、つい言い返してしまった。できないと言われればやってやりたくなる。真琴には幼いころからそういう負けず嫌いのところがあった。しかし男はそんな真琴の言葉に気をよくするどころか、ますます絶望的なため息をついた。
「いやいや……もう結果は見えてるから。あんたにはここは三ヵ月ともたないよ。──だからこっちは何ヵ月も前から直接人事に『女は絶対いらない』ってしつこいくらい頼みこんでたのに……」
 男のあまりにも差別的な言葉に、真琴はついに語気を荒げてしまった。
「あの! わ……私はたしかに女ですけど、男性と同じように、いえむしろそれ以上にちゃんと仕事はするつもりです!」
 相手はこれから一緒に仕事をしていかねばならない先輩なのだろうが、そんなことはもうどうでもよくなっていた。
「失礼を承知で申し上げますけど、あなたは女性にひどい偏見をお持ちのようですね。これまであなたがどんな女性と出会ってこられたのかわかりませんけど、私をその方たちと一緒にしないでください!」
 男は一瞬面食らったように口をつぐんだが、やがて長いため息をつきながら肩をすくめた。
「続かないよ──あんたみたいなタイプはとくに」
 そう言いながら黒田は、改めて真琴の全身をチェックするように、上から下までじろじろと眺めた。学生時代はそれなりにモテて、顔もスタイルも人並み以上の自信がある真琴だったが、黒田は真琴の顔と体つきを見て、残念極まりないといったように首を横にふった。
 自分のようなタイプは続かないとまで断言され、真琴はますます頭に血がのぼってしまった。入社したら、頑張って同期の誰よりも早く仕事を覚えたいと意欲的な気持ちを持っていただけに、差別と偏見に満ちた言い方をされたことに心底腹が立った。
「続くかどうかなんてあなたが決めることじゃないと思います。少なくとも私はそう簡単に辞めるつもりはありません!」
 むきになって必死で言い返す真琴を、男は無表情で見ていたが、やがて、それ以上話す気力もないといった表情でこう言った。
「──あっそ。そこまで言うならついてこい。ちょうどいまから撮影が入ったから。ほら、これ持って」
「は……さ……撮影……?」
 わけもわからないまま、男が抱えていた段ボール箱を持たされ、いま降りてきたばかりのエレベーターに押し込まれた。
「ちょ……ちょっと待ってください! 上司の方や部署の方たちにあいさつを……」
「必要ない」
 男は有無を言わさず地下駐車場行きのボタンを押してしまった。
「は?」
「いいからついてこい」
「ちょっと……あなたの判断でそんな勝手なことしていいんですか?」
「俺は黒田。言っとくけど俺が第三のチーフ、つまりお前の直属の上司だから」
「え──チーフ?あ なたが?」
 真琴の顔から一気に血の気が引いた。
「わかったらごちゃごちゃ言わないで、俺の指示に従え」
「あなたが……上司……」
 思い描いていた楽しいOL生活の夢が音を立ててガラガラと崩れていく。
 この男の下でいったい何年働くことになるのか……同じ部署にいるほかの社員たちはどういう人たちなのだろう……いや、こんな横暴な上司、絶対にみんなから嫌われているはずに違いない。こうなったら、その人たちを頼りにするしかない。
 真琴が唇をかみながらあれこれ考えているうちに、エレベーターは駐車場に到着した。黒田はすぐにスタスタと車のほうへと向かいながら、振り返りざまにこう言い放った。
「ついでに言っとくけど、あの部署、俺とお前のふたりだけだから」
「え? ……ふたりだけ……? ……はっ!?」
「だから言ったろ? 前にいた女子社員はみんなやめたんだよ」
 あぜんとする真琴を無視して、黒田は車のトランクに段ボールを積み込んだ。
「いまから車でモデルプロダクションの社長を拾って現場に向かう」
「モ、モデルプロダクション?」
「うちはモデルや女優の衣裳を扱う部署だから、撮影現場に立ち会うことが多いんだ」
「えっ……そうなんですか? ……モデルさんや、女優さんの……」
 予想もしていなかった華やかなキーワードに、真琴は驚いた。
 入社試験を受けたときには、この会社でそういった仕事があることはまったく知らなかったのだが、そういうことならこの部署でじつはラッキーだったのかもしれない。
「撮影の立ち会いができるなんて……すごい」
 モデルの撮影と聞いていっぺんにテンションが上がった単純な真琴を見て、黒田はまたあきれたようにため息をついた。
「いまから会う藤田社長はかなり上得意の特別なお客さまだから、絶対に失礼のないようにしろよ。──お前はちょっと社会人としての常識が欠如しているみたいだからな」
 黒田にバカにしたような口調で言われて、真琴はまたムカッとなって言い返した。
「失礼がないようになんて、言われなくてもわかってます!」
「……どうだか」
 ムキになる真琴を黒田は鼻で笑うと、
「俺が運転するから、お前は社長とうしろの座席に乗れ」
 とぶっきらぼうに命令した。



 繁華街に近い、大きなマンションの下で黒田は車を停めた。すぐにエントランスからサングラスをかけた中年の男が出てくるのが見えた。派手な柄のシャツにカジュアルな素材のジャケットを羽織り、いかにも業界人というオーラを放っている。
「ボヤボヤしてないで車のドアを開けろ」
「あっ……はいっ」
 黒田にぼそっと言われて、真琴は慌てて後部座席から飛び降りた。
「……お、おはようございます!」
 大きな声であいさつしながら車のドアを開けると、社長が真琴の顔をじいっとのぞきこんできた。男の年齢は五十代くらいであろうか。目尻や口元には年齢を感じさせるシワがあったが、日焼けした浅黒い顔はギラギラと異様に脂ぎっていて、独特の迫力があった。
「君は? ……見ない顔だな」
「藤田社長、おはようございます。この子はうちの新入社員なんですよ。今日が初出勤なんで、いろいろ粗相があるかもしれませんが……まだこういう現場にも慣れておりませんのでよろしくお願いします」
 運転席から降りてきた黒田が、さっきまでとはまったく違うはきはきとした口調で答えながら、男の鞄をすばやく受け取った。
 真琴は、黒田の態度の豹変にあきれながらも、とにかくこの藤田という男の機嫌を絶対に損ねてはいけないのだということはしっかり感じ取っていた。
「み……美並真琴です。よろしくお願いします」
「では、急いで現場に向かいますので」
 藤田が後部座席に乗り込むと、黒田はすばやく車を発進させた。
「君──真琴ちゃん、だっけ? 初々しいね。何歳なの?」
 車が走り出すと、藤田が真琴のほうに体を傾けながら聞いてきた。脂ぎった中年独特の体臭と、ムッとするほどの香水の匂いに息苦しさを感じながら、真琴は無理やり笑顔を作った。
「は……はい……二十二です」
「へえ……二十二歳か。彼氏は? いるの?」
「……い……いえ……」
 真琴には二年ほど付き合っていた彼氏がいたのだが、つい最近別れたばかりだ。
「そうなんだ。こんなにかわいいのに、もったいないじゃない」
 藤田が尻をずらして、さっきよりもさらに真琴のほうに体を密着させてきた。
「は……はあ……」
 逃げるわけにもいかず、真琴はうつむきながら苦笑いをした。
「真琴ちゃんは、芸能界とかモデルとか、興味ない?」
「え……ええ……まあ……」
「よかったら今度うちの事務所に遊びに来るといい。君くらい綺麗でスタイルもよければ、すぐにでもデビューさせてあげるよ」
「そ、そんな……デ……デビューなんてまさか……」
「本当だよ? ちょっとでも興味があるんなら、一度時間を作ってあげるから、食事にでも行こうよ」
 藤田がねちっこい口調で言いながら真琴の背中に手を回してきた。
「夜景の綺麗なホテルのラウンジにつれていってあげようか? もう社会人なんだし、外泊しても問題ないよねえ?」
 その言葉に、どういう含みがあるのか、さすがに真琴にも察しがついた。ドラマにでも出てきそうなあからさまなセクハラ発言に、真琴は驚いて黒田を見たが、黒田はまったく気に留めない様子で運転に集中している。
「ちなみに、君、スリーサイズは? けっこういいカラダしてるみたいだけど」
 ジャケット越しにでもはっきりわかる、藤田のスケベったらしい指の感触に、全身に鳥肌がたった。
『やめてください!』と大声で叫んで藤田を突き飛ばしたかったが、黒田に釘を刺されている手前そういうわけにもいかず、真琴はただ身を硬くして肩をすぼめた。
「いや……あの……そういうのはちょっと……」
「自分のスリーサイズだよ? 知らないの?」
 真琴がどうしていいかわからずにもごもごしていると、ルームミラー越しに、黒田が真琴をチラリとこちらをにらんだのがわかった。
「あー……あの……標準です標準!」
 黒田の視線を『答えろ』という威嚇だと解釈した真琴は、しかたなくそうごまかした。藤田はニヤニヤしながら真琴の肩を自分のほうへ引き寄せると、もう片方の手で真琴の太ももをなで始めた。
「標準じゃわからないなあ。なんなら俺が測ってやろうか? 俺は女のカラダに触っただけで、そのスリーサイズがわかるんだ」
「いえ……あ……あの……」
 さすがに拒もうとして藤田の手を押しのけようとしたが、大柄な中年男の力にはまったく太刀打ちできない。藤田はストッキングの感触を楽しむように真希のももの上で指を滑らせながら、スカートの裾を少しずつ上へ押し上げてくる。あきらかに意図的なその動きに、強烈な不快感がこみあげてきた。
「ちょ……っ……社長……」
 あまりに大胆すぎる痴漢まがいの行為に真琴は戸惑い、ひどく動揺していた。
「彼氏いないんなら、男に触られるの、ひさしぶりなんじゃない?」
「……ちょ……ちょっ……」
「恥ずかしがらなくてもいい……誰も見てないよ」
 藤田は真琴の耳元でささやきながら、一気にスカートの奥へと手を突っ込んできた。藤田の指先が、パンティに届きそうなほど這いあがってくる。
「あ……やっ……」
 予想を超えた藤田の行為に、真琴ははからずも甘い声が漏れてしまった。それに気をよくしたのか、藤田はさらに大胆に、真琴の太ももの内側に手のひらを突っ込んできた。いまにも股間に届きそうな脂ぎった指の感触に、真琴は悲鳴をあげそうになりながら必死でひざを閉じようともがく。
「何? ……もう感じてるの?」
 肩を抱いていた藤田の手が、背中側から真琴の脇の下に入り込んできた。
「あっ……やっ……」
 藤田の指は、すぐさまジャケットの上から真琴の乳房をまさぐりはじめる。
「なかなかいいおっぱいしてるじゃないか……」
「……あっ! ……ちょっ……しゃ……社長っ……」
 ここまでされても我慢すべきなのだろうか?
 真琴は救いを求めるようにバックミラーに映っている黒田を見たが、黒田はあいかわらず眉間にシワをよせたまま車を運転している。
 太ももをさすっていた藤田の指は、ついに真琴の股間にまで到達しようとしていた。ストッキング越しではあるが、真琴のパンティのクロッチ部分に、指を押しつけてきた。ぬるっとした感触で、不覚にも自分が濡れてしまっていることがわかる。
「ほら……濡れてるじゃないか」
 藤田が真琴の耳元でいやらしくささやいた。
「……あの! ……やっ……やめてください……」
 真琴はとうとう我慢できなくなり、抵抗の言葉を口にした。しかし、藤田は手を止めるどころか、股間に押しつけた指先を小刻みに動かし始めた。
「ふふふ……どうだ?」
「あっ……ああっ……」
 快感とも不快感ともわからない、背中がゾクゾクするような感覚が真琴の全身に駆け巡った。くやしいけれど中年男の熟達した指遣いに、腰がくだけそうになる。
「あ……しゃ……社長……」
 真琴は必死でもがいて藤田を押しのけようとしたが、その大きな体は怖いくらいびくともしない。
 せまい後部座席で、身動きもとれないまま、真琴は藤田の悪魔のような悪戯にただただ耐えるしかなかった。
「君がそういう態度だと、会社に迷惑がかかるぞ? うちとの取引がなくなったら、困るのはそっちのほうだろう?」
 藤田はねちねちと脅し文句を口にしながら、真琴の割れ目のあたりをさらに大胆に手のひらでなで回し始めた。
 真琴のスカートは完全にめくれ上がり、ストッキングの下につけているレースの下着がまる見えになってしまっている。
「……ううっ……しゃ……社長……もう……」
 好きでもない中年男の卑劣な行為。吐き気がするほど不快なはずなのに、真琴の体はその強引な愛撫に完全に反応してしまっていた。触れられた部分がジンジンと熱を帯び、子宮の奥がきゅうっと収縮するようにうずく。心では拒絶しているはずの刺激を、真琴の若い肉体は貪欲に受け入れようとしているようだった。
「い……やっ……あっ……」
 藤田の指が、ストッキングの上から真琴の割れ目の上部にあるもっとも敏感な部分をとらえた。いつのまにかパンパンに充血してしまったその潤んだ肉芽が、藤田の手慣れた指先に引っかかれた瞬間、真琴の口から明らかにいままでとは違う切ない吐息が漏れてしまった。
「ああっ……あああん……」
『このままでは、ここでこの男に犯されてしまう──』
 真琴の中に言いしれぬ恐怖がこみあげてきた。こんな真昼間の人通りの多い街中ではあるが、黒田が車を走らせ続けるかぎり、この車内はいわば完全な密室なのだ。どんなに叫んでもわめいても、決して助けはこないのだ。
 そうしているうちにも、藤田の指の動きはさらにえげつなさを増していた。股間をまさぐる指が、ストッキングの股の部分をビリッと突き破り、下着の脇から直接濡れた陰部に触れてきたのだ。藤田の太い指がクリトリスをこねまわし、乳房をもんでいたほうの手はジャケットの下にまで入り込んできて、薄いブラウス越しにブラをずらそうとしてくる。
「……もうこのままホテル行くか? 俺がいなくても撮影ぐらいなんとかなるだろう」
「あっ……い……いっ……いやあっ……!!」
 真琴がついに我慢できずに悲鳴を上げたとき、車がようやくスタジオらしき場所に到着した。
「社長、着きました」
 黒田がすばやく運転席から出て、後部座席のドアを開ける。
「ああ……着いたか……」
 藤田はなごり惜しそうに真琴の体をまさぐっていたが、黒田にふたたび目でうながされ、しかたなく真琴から離れた。
「社長、おはようございます」
 スタジオの中から、スタッフと思われる男性が出迎え、藤田はその男に案内されてスタジオの中へ入っていった。


 藤田が行ってしまったあと、黒田が真琴の座っているほうのドアを開け、声をかけた。
「どうだ? ──もう辞めたくなったろ?」
「…………」
 真琴はすぐには気持ちの切り替えができず、後部座席に座ったまま動けずにいた。ショックと恐怖で体が小刻みに震えている。
「降りろ──」
 黒田は、真琴の腕をつかむと、車から降ろして立たせた。
「怖かったか」
 黒田が怒ったような口調でぼそっとつぶやいた。『だから、女はだめなんだよ』きっと冷たくそう言われるだろうと真琴は思った。しかし、予想に反して、黒田はひどく申し訳なさそうな顔になり、真琴に向かっていきなり頭を下げた。
「すまなかった──できるだけ早く着くように走ったんだが、今日は道が思ったより混んでて──俺がいながらあんな目に遭わせてしまって──申し訳ない」
「……えっ」
 黒田の意外な言葉に、真希は驚いて顔をあげた。
「あの社長、とりあえず女を横に座らせないと、極端に機嫌が悪くなるんだ──そうなると、あとあと会社的にかなり面倒だから……。セクハラもいつもは言葉だけであそこまでひどくないんだが──お前の容姿がいいから気に入ったんだろう」
「……え……」
「さっきも言ったとおり、うちの職場は女にはキツい。人事にも再三そう言っているんだが、いまみたいな接待要員として美人でスタイルもいい女の子がよく配属されてくる。どうやら藤田社長は、うちの人事部長と懇意にしているらしいんだ。お前もたぶんそういう人事だって、見た瞬間にすぐわかったよ」
「……そういうことだったんですか」
 黒田が、真琴が女であることを嫌がり、その容姿を見てため息をついたのはそいうことだったのかと、真琴はようやく理解した。
「いいか……半年我慢したら『人事異動希望調査』があるから、そのときにすぐに異動の希望を出せ。俺からもなんとか人事に手を回してかならず上のフロアに上げてやる。それまでの辛抱だから。会社は辞めるな」
「黒田チーフ……」
「どうする? やれるか?」
「──は、はい」
 この黒田という男は無愛想でそっけない男だが、思ったほど嫌なヤツではないのかもしれないと真琴は感じ始めていた。
「じゃあトランクの荷物をすぐ上の控え室まで運べ。もたもたして社長の機嫌をそこねんなよ」
「はい!」
 黒田はあいかわらずぶっきらぼうな口調だったが、真琴はもう嫌な感じはしなかった。

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堅物上司と淫らな撮影 秘蜜に濡れるランジェリー

堅物上司と淫らな撮影 秘蜜に濡れるランジェリー

著  者
アユミ
イラスト
ルシヴィオ
レーベル
eロマンス文庫
価  格
454 円(税抜)
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