女王様は、黒き禍を望む(1)

第一章 魔女、帰還する
第1回

第一章 魔女、帰還する

女王様は、黒き禍を望む
2018/09/28公開

   ◆◇◆ 魔女の悪評 その一 ◆◇◆

 ――面倒くさい。
 レジーナは、目の前に這いつくばるオッサンを見下ろし、うんざりした。
 ボロボロと泣き、オロオロと命乞いをするその姿は、美少年や美少女ならば憐憫を誘うが、シワイだけのオッサンの場合、嫌悪と苛立ちが助長されるだけだ。
 消し炭にして抹殺したいと、心の底から思う。
 ――いや。思うだけじゃなく、殺っちゃってもいいのでは?
「ど、どうか、お許しをっ……こ、このお詫びは……」
「詫びなどいらぬ。おまえは、契約を反故にしたのだ。相応の報いを受ける覚悟があったのだろう? この『赤の魔術師』を謀るくらいなのだから」
 レジーナが、念入りに厚化粧した顔に冷笑(毎日鏡の前でチェックと練習を欠かさない)を浮かべ、真っ赤に塗った爪(死ぬほど時間がかかったので、もうやらない予定)を見せびらかすように、大げさに腕を突き出し(視覚の効果は大切なので)、格好良くローブをはためかせると、オッサンを囲む炎の柱が現れた。
 燃え上がる炎は天井まで届きそうな勢いで、たった一人を取り囲むには、少々大きすぎた。
 豪華な玉座の間の絨毯と壁にかかっていたタペストリーも燃やしつくし、部屋の隅に固まって震えていた人々を危うく飲み込みそうになる。 
 レジーナは尻に点いた火を転げ回って消そうとしているオッサンを見下ろし、苛立ち混じりの溜息を吐いた。
「見苦しいっ!」
 忌々しげに叫んだ瞬間、床が大きくへこみ、転げまわっていたオッサンは小さなネズミになり、周囲にいた幾人かが、ウサギや猫へと姿を変えた。
 予定外の巻き込み事故に、「これくらい仕方ない」とレジーナは自分に向けて言い訳をする。
 力が大きすぎるだけ。決して、制御できていないわけではない。
 断じて、違う。
「へ、陛下っ!?」
「お、お父様っ!」
 遠巻きに様子を窺い、運良く獣化を免れた大臣やら王妃やら王女やらが、慌てて駆け寄る。
 しかし、ネズミにとっては、数百倍も大きな人間に取り囲まれるなど恐怖以外の何物でもない。逃げ惑い、広い部屋を走り回り、そして――。
 美しい縞模様の毛並みの猫に、パクリとくわえられた。
「きゃぁぁあぁぁっ!」
 悲鳴と怒号の響く中、猫はすばやく身を翻した。
 慌ててそれを追いかける人々と共に、騒がしい鳴き声を上げながらほかの動物たちも部屋を飛び出して行く。
「……アホらし」
 レジーナは大きな溜息を吐いた。

 レジーナが、魔族が頻繁に出没するというとある国からの依頼を受けたのは一週間前。人間の姿をしている魔族のようだと聞いて、かなりの苦戦を覚悟でやって来た。
 世間一般では、幻獣や精霊なども含め、人に害をなす存在をすべて魔族とひとくくりにして呼んでいるが、魔術師や司祭などの人外危険物取扱専門職において、『魔族』とはかつて人間だったものを意味する。
『魔族』とは、『悪魔』に取り込まれて人間ではなくなってしまった者のなれの果てだ。
『悪魔』は、富や力、美貌や寿命など、様々なエサで人間を誘惑し、取引を持ちかけ、最終的に自分の支配下に置く存在だ。特に、死の間際にその誘惑に負け者は多い。
『悪魔』に堕ちた人間は、最初のうちは人間らしい部分を残しているが、そのうち人間を見ると襲わずにはいられない『魔族』の習性に吞み込まれる。人間としての心を失うと共に、その身体も人間のものではなくなり、殴られようが斬られようが、粉々にされるまで死ねない。戦場で、無残な死を迎える間際だった場合は、そのままの姿で『魔族』になるため、まるで死体が生きているかのような風貌になり、人間はそれらが自分たちの同胞のなれの果てだとは気付かない。
 しかし、一番厄介なのは、『魔族』を生み出す『悪魔』だ。『悪魔』は、自在に姿を変えることができるため、美しい女、たくましい男、時には愛らしい子どもの姿で近寄って来る。『悪魔』かどうかを見分けるのは、至難の業。高位の魔術師や神々の祝福を受けている司祭や巫女でも、よほど怪しい行動でもしない限り、確実に見分けるのは難しい。
 それゆえ、レジーナも気を引き締めて依頼を受けたのだが、調べてみれば、タダのゴロツキが騒ぎを起こしていただけだと判明した。
 結果として、『魔族』相手ではなかったが、そいつらは血祭りに上げてやった。
 事件は解決したので、当初契約した報酬の金貨一千枚を要求したのだが――しわい王様は、魔族ではなかったのだから、半額でもいいだろうと値切ってきた。
 魔術師との契約は、依頼を実行する前に結ばれる。出来高払いなど、あり得ない。
 実際には、見込んだ報酬分以上の働きをする場合のほうがほとんどなのだが、人間は喉元過ぎれば熱さを忘れる生き物だ。危険がなくなったと知るや否や、より有利な取引をしようと画策しだすので、事前に報酬を取り決めることになっていた。
『いいのか? 止めを刺さなくても?』
 スルリ、と腕輪から赤いトカゲへと戻った相棒のカルスが、物騒なことを囁く。
「そんなことをしたら、余計に面倒なことになる」
 術は数時間で解けるだろうから、猫にかじられても恥ずかしい噛み痕が残る程度だろう。
 レジーナは、金貨五百枚の入った箱と残りの代金になりそうなものとして、趣味の悪い黄金の玉座をいただいていくことにした。
「アレ、運んで」
『私を便利な荷運び屋扱いするなど……』
 ぶつぶつ文句を言うトカゲの尻尾を持ち上げて、レジーナはニヤリと笑う。
「トカゲの丸焼きって、魔女の作る怪しげな薬の必須材料第一位だって、知っている?」
『……まぁ、よかろう。今回だけだぞ』
 そう呟いたカルスは、赤い大きなトカゲ――巷ではドラゴンとよばれるものへと姿を変えた。
 天井を突き破り、壁を粉々にしてから、黄金の玉座を片手にレジーナを背に乗せ、薄い膜と太い骨でできた大きな翼で一度羽ばたいて、あっという間に高い空へと舞い上がる。
 小さな人間たちが、畏怖の表情を浮かべて指さし、口々に叫ぶ姿を見下ろす藍色の瞳に、悪戯を企む光が過る。
「カルス?」
 レジーナの窘める声など聞こえないとばかりに、相棒は鋭い牙を剝き出しにして、大きく開いた口からバリバリと雷鳴のような咆哮響かせ、威嚇の炎を吐き出した。

 この日、『赤の魔術師』レジーナに、新たな悪評が一つ加わった。
 曰く、深紅のドラゴンで王城を破壊し、人々を殺戮しようとした傍若無人な恐ろしい魔女、という悪評が。
    ◇ ◆ ◇

「これ、今回の報酬」
 レジーナが机の上に置いた木箱と、カルスが運び込んだ床に転がる黄金の椅子を見やり、『七色の魔術師』ハルク・スペランザーは細い眉をわずかに引き上げた。
 石造りの部屋は、質素かつ実用的。大きな執務机と壁一面の書棚があるだけで、来客用の椅子一つすらない、単に仕事をするための場所だ。
 しかし、その部屋の主は、もっときらびやかで華やかな部屋が似合いそうな、貴族のひ弱なおぼっちゃま風の外見である。長い銀色の髪を無造作に一つに束ね、冷ややかな青灰色の瞳をしたハルクは見目麗しい青年だが、泣く子も黙る恐ろしい力を持つ魔術師として知られている。
 生まれながらに、魔術師として比類なき力を発揮していたハルクは、魔術師を志す者が目指す最高学府の『精霊の庭』における最高位、『七色の魔術師』の称号を弱冠《じゃっかん》十六歳で手にした。
 末は、歴史に残る偉大なる魔術師として、『精霊の庭』を俗世から守り、深い知識を極めていくのだろうと誰もが思っていたのだが、ハルクの選んだ道は人々の予想とはかけ離れたものだった。
 最高位の証を手にしたハルクは、『精霊の庭』の総意を決定する十三人からなる議会の一員となるなり、これまで人の世に関わらないとしていた方針を転換すべきだと訴えたのだ。
 正当な評価に基づいた報酬を得て、魔術師という存在を認知させ、受け入れさせるためにも、積極的に人間と関わるべきだと言うハルクの主張は、激しい反対に遭い、結果『精霊の庭』から追放された。
 しかし、表立ってハルクに賛同せずとも、陰でハルクを支持する魔術師は少なくなかった。
『精霊の庭』を離れ、追放されたハルクの下へと身を寄せる魔術師は後を絶たず、ハルクは彼らと共に、様々な国や人々からの依頼に応じて魔術師を派遣する組織を立ち上げた。
『精霊の庭』ならぬ、『精霊の家』という名で。
 誤解を招くことを狙ってつけられた名は、派遣された魔術師たちの容赦ない仕事ぶり――時に行き過ぎの場合もあり――によって、瞬く間に世界中に響き渡り、依頼が殺到するようになった。
 そして、そんなハルクと彼の協力者である魔術師たちの名声を看過できなくなった『精霊の庭』は、ハルクが去ってから三年後、灰色の決着をつけることにした。
 各国各地から『精霊の庭』へくる相談事の解決を正式にハルクへ一任し、ハルクは『精霊の庭』を出た魔術師しか雇わないこと。『精霊の庭』のお墨付きをもらうかわりに、各国各地で才能ある子どもを仕事のついでに探し出し、『精霊の庭』へ導くことを請け負う契約を交わしたのである。
 それから十年。ハルクが保護した子どもたちは手厚く遇され、『精霊の庭』で知識の探求に身を捧げたり、故郷へ戻り野に下ったり。またはハルクの下で凶暴な幻獣や人間の天敵である『魔族』と渡り合い、時には人間同士の殺し合いに巻き込まれる波瀾万丈の人生を歩んでいたりする。
 レジーナも、そんな子どもの一人であった。 
 十二歳で『精霊の庭』へやって来て六年目。今から一年ほど前に、『精霊の庭』でも高位である『赤の魔術師』の称号を得た。高位魔術師を欲する国は少なくなかったし、『精霊の庭』に残るという選択肢もあったが、レジーナは、自由の利くハルクの下で働くことを選んだ。
 しかし……少々早まったかも、と思わなくもない。
 何せ、ハルク・スペランザーは容赦がない。馬車馬のごとくこき使われ、今日はこちらの国、明日はあちらの国と、実に無慈悲な扱いをされる。傍目には見目麗しい青年でも、その中身はやり手ババアならぬやり手ジジイ。守銭奴と呼んでもいいくらい、金にうるさい。何のためにそんなに金が欲しいのかは知らないが、ハルクの中の優先順位第一位が『金』であることを知らぬ者は、『精霊の家』にはいない。
「ずいぶんとシケているな」
 箱の中身を検めたハルクは、冷たい眼差しと同じ冷たい声で、不服を述べた。
 言われると思った、とレジーナは内心溜息を吐きつつ、言い訳する。
「『魔族』じゃなかったからって、値切られた」
 ハルクの灰銀色の眉が跳ね上がり、その薄い唇が残忍な笑みを浮かべた。
「あの国へは、二度と魔術師を派遣しないことにする。それで、そこに転がっている悪趣味な椅子は何だ?」
「足りない分」
「換金してから持ってこい」
「ハルクが金に戻せばいいだけじゃない。こんな代物を買い取ってくれるところなんかない」
『七色の魔術師』をもってすれば、金から作り出したものを再び金の塊へ戻すことなど朝飯前だろう。しばらくは休みをもらうと宣言して、不機嫌なハルクを無視して部屋を出ようとしたレジーナだったが、呼び止められた。
「レジーナ。おまえの休暇は、ナシだ」
「は?」
「次の依頼が来ている」
「他のヤツにまわしてよ! もう、三ヵ月もまともに自分の部屋で寝てないんだけど?」
 人づかいの荒い上司は、抗議しないとギチギチに依頼を詰め込んでくる。
『精霊の庭』という権威ある学び舎出身の魔術師だけで構成されている、『精霊の家』から派遣される者の能力は折り紙つきだ。おとぎ話や英雄譚に出てくる魔術師は、九割が『精霊の庭』の出身者と言われるため、信頼度抜群。所属するすべての魔術師が、毎日依頼を十件ずつこなしても、三年先まで予約で埋まっているくらい繁盛している。
 それなのに、ハルクは誰もやりたがらないだろう、くだらぬ依頼を引き受けて、順番をすっ飛ばしたりする。
 何らかの法則があるらしいと同僚たちは言っているが、もうすぐ三十になるとは思えぬほどの若々しい美青年ぶりに反して、その腹は老獪な策士のごとく真っ黒だとレジーナは確信している。
 ハルクはどんな依頼でも派遣した魔術師に判断を一任する。力を貸す必要はないと派遣された魔術師が判断すれば、それでよしとするが、派遣する際に支払われる一定額の相談料は返金しない。つまり、派遣された魔術師が断りそうな案件を多く受ければ、相談料だけで稼げるというわけだ。
「おまえを指名しての依頼だ」
「指名?」
 これまで、数回指名を受けたことがあるが、その理由の大半は、悪評高い『赤の魔術師』を一目見て、話のネタにしようというものだった。
 どうせそういったくだらぬ理由だろうとレジーナは鼻を鳴らした。
 しかもハルクは、「既に、指名料はもらっている。断るのは不可だ」と言って、机の上に積まれた書類の中から薄水色の封筒を取り出し、レジーナへ向かって放り投げた。
 羽の生えた封筒が自ら飛び込んでくるというシュールな光景に、「ひいぃっ!」と悲鳴を上げつつ受け取ったレジーナは、急いで封筒から上品な透かし模様の入った質のいい便箋を取り出した。
 一体、どこの誰からだと訝しく思いながら、無造作に開き、目に飛び込んできたものに驚いた。
 封筒よりも一段濃い水色の便箋の上部に金箔で押された、大樹を象った紋章は、七年前までことあるごとに目にしていたものだ。
 差出人は、次期国王であり、現在王国軍を率いる総大将の王太子ロレンツォ。国の名は、バルベリーニ王国。
 レジーナが、七年前に去った祖国だ。
 ロレンツォの依頼は簡潔で、魔族との戦いに苦戦しており、どうか力添えしてくれないかというものだった。
「フリオ・ブルーノから、おまえを寄越してほしいという依頼も添えられていた。断れまい?」
 ハルクの言葉に、レジーナは苦々しい思いで頷いた。
 ロレンツォ・バルベリーニの依頼は断ることができたとしても、フリオ・ブルーノからの依頼は、断れない。
 七年前、ある事情から早急に祖国を離れなくてはならなくなったレジーナのために、ハルクに手紙を書き『精霊の庭』で引き取ってくれるよう頼んでくれたのは、バルベリーニ王国の偉大な魔術師フリオ・ブルーノだった。
 当時、フリオ・ブルーノに礼をするための金も力も持ってなかったレジーナは、自分の未来を支払った。立派な魔術師になった暁にはフリオ・ブルーノの頼みを一度だけ聞く、と約束したのだ。
 ハルクは、レジーナの動揺と逡巡を見透かしたように、ニヤリと笑った。
「後払いは高くつくものだ、レジーナ。せいぜい、『赤の魔術師』は腰抜けだなどと言われぬようにしろよ。ああ、それから……その化粧は、やめろ。いくらそばかすが気になるからといって、厚塗りすればいいというものではない。爪も、うまく塗れないのならやめろ。みっともない。ついでに言うと、たとえローブの下であっても、出るべきところが出ていないくせに、身体の線を露にするような服を纏うのは、逆効果だ。要するに……おまえの格好は、道化にしか見えん」
 容赦なく指摘され、ワナワナと震えながら、レジーナは拳を握りしめた。
 大人になれば消えると思っていたけれど、いっこうに消えないそばかす。十九歳になっても、大人の女性どころか子どもに間違われる貧弱な身体。顔を作りかえるほどの高等技術の結晶としての化粧術は、未だに会得できずにいる。
 魔術オタクばかりの集まる、九割が男性という世界で少女期を過ごせば、化粧全般に限らず、女らしいお洒落のセンスを培えるはずもないのだ。先輩の女性魔術師たちは、誘惑の必要がある場合は、媚薬や幻覚など手っ取り早い手段を取るので、何の参考にもならない。レジーナも同じようにすればいいのだと言われたのだが、それができないから、小手先の技術でどうにかしようと必死に頑張っている。
 自らの姿を変えるのは、理論上それほど難しい術ではないが、レジーナにとっては簡単なことではない。なぜなら――。
「いい加減、対象が小さくとも術を使えるようになれ。小さな術ですむところを、膨大な量の力を行使するということは、対費用効果が悪い。非効率的だ」 
 レジーナは、絶大な力を誇る『赤の魔術師』だ。『魔族』の大軍だって、一瞬で吹き飛ばせるくらいの術を、軽々と操れる。
 だが、唯一の弱点は、細かな術がうまく操れないこと。
 大軍は倒せても、大軍の中にいる一人だけを倒すことができないのだ。
 対象がそもそも一人だった場合は、周囲に甚大な被害を及ぼしつつ何とかできるが、それこそ非効率的だった。
「だから、ちっさい仕事を寄越さないでって、いつも言ってるじゃないっ! それに私がどんな格好しようが、ハルクには関係ないっ! 大きなお世話だってのっ!」
「大いに関係ある。我が『精霊の家』の魔女がおまえのように残念なのばかりだと思われたら、依頼が減る」
「私は残念じゃないっ!」
「十九にもなって、男の一人も囲えずにいるおまえの言葉には、まるで説得力がない。負け犬の遠吠えだな。どうせ、キスもしたことのない処女だろうに」
「なっ……しょっ……き、キスくらいしたことあるっ!」
 処女ではあるが、キスは経験済みだと怒りに任せ、真っ赤になってレジーナが叫び返せば、ハルクが疑わしげな目を向けてくる。
「いつだ? まさか、子どもの頃とか言わないだろうな?」
「うっ……」
 図星を指されて、レジーナは言葉に詰まった。
「……終わってるな」
 あからさまに同情の溜息を吐かれ、レジーナはビシッとハルクを指さして、宣言した。
「今回の依頼の報酬で、イケメンをゲットするっ! 私の魅力でメロメロにして、虜にして、下僕にしてくれと懇願させてみせるっ! そしたら、一ヵ月の休暇、もらうからっ!」
「だからその発想が、残念だというんだ」
「あとで謝ったって、知らないからね!」
「わかったわかった。さっさと行け」
 シッシッと犬を追い払うように手を振るハルクを忌々しげに睨み、ぐしゃり、と手紙を握り締めたレジーナは、今度こそ背を向ける。
 ハルクはまるで言い忘れていたかのように、わざとらしい声音で告げた。
「……おまえの可愛い妹が、近々婚約するらしい」
 弾かれたように振り返ってしまったレジーナは、そこにこの上もなく意地の悪い、黒い笑みを浮かべたハルクを見た。
「相手は、ルチアーノ・ロッシーニ。おまえの幼馴染の騎士殿だそうだ」

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女王様は、黒き禍を望む(1)

女王様は、黒き禍を望む(1)残念魔女はワンコな下僕に翻弄されてます!?

著  者
唯純 楽
イラスト
むらき さあや
レーベル
eロマンスロイヤル
価  格
1200 円(税抜)
シリーズ
女王様は、黒き禍を望む
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