悪役令嬢(仮)の奮闘

悪役令嬢(仮)の奮闘
第1回

悪役令嬢(仮)の奮闘

2019/06/28公開

プロローグ

「明日はいよいよ断罪 イベントだ――確かに彼女はそう言ったのね?」

 レーンドル王国最高峰の魔法教育機関である王立レムレス学園。その学生寮の一室で、侯爵令嬢である私、レベッカ・ハワードは、襲い来る記憶の渦に翻弄されて大混乱していた。
 明日には卒業式を控え、本来であれば新たな旅立ちの日に胸を躍らせるべきところを、ひとりの少女がもたらした『断罪イベント』をキーワードに、過去の様々な記憶が結び付き、点が線となり―――私の心を風に吹かれる木の葉のように翻弄していた。

『断罪イベント』。それは、日本の乙女ゲームのテンプレであり、ネット小説でも好んで題材とされる、いわゆる『ざまあ』というやつだ。
 ありがちなのが、身分は低いもののチート満載の美しい娘が主人公で、その国の魔法学校に入学し、そこで王族や高位貴族、宮廷魔法使いに騎士団などの子息たちを攻略するというもの。当然そういうハイスペック男子には婚約者がいて、身分の低い主人公をあの手この手でいじめる。彼女たちは一般的に『悪役令嬢』と呼ばれ、主人公の恋愛成就に伴って、婚約破棄、身分剥奪、国外追放、最悪は死刑、そしてアダルト・バージョンでは身の毛もよだつような凌辱の末路をたどる。そのきっかけとなるのが、『断罪イベント』なのだ。

 そんなことを、なぜレーンドル王国の侯爵令嬢である私が知っているのか?
 それは、希少な光属性の魔力持ちの男爵令嬢、シャーロット・シルバ嬢が発した、「明日は断罪イベントだ」というセリフに端を発する。
 この世界には、断罪イベントという単語は存在しない。そもそも、人を処断することを『イベント』などと言おうものなら、嗜虐趣味を疑われ、下手をすると快楽殺人者のレッテルを貼られることになる。
 シャーロット嬢がその不謹慎極まりない造語を発したことで、私の心の奥底で眠っていた記憶が目を覚ました。
 前世持ちの転生者。シャーロット嬢と私は、いわゆる乙女ゲームの世界に異世界転生を果たしたらしかった。

 前世を思い出したことで、私は自分に迫る危機を察知した。
 最近やけに親密な我が国の第二王子ギャレット殿下とシャーロット嬢。明日の卒業式に合わせて行われる予定の断罪イベント。そこで断罪される令嬢と言えば、ギャレット殿下の婚約者―――つまり、私で間違いないということを!
 けれど、私は絶望したりしなかった。
 人の心は移ろいゆくもの。ギャレット殿下が愛を理由にシャーロット嬢を選ぶなら、私も婚約解消に否やはない―――むしろ婚約を解消したい。
 私にこの決断をさせたのは、三年前の婚約直後の出来事だ。当時は気づかずにスルーしてしまったけれど、今なら分かる。きっとあれは、私の人生を大きく左右する出来事だったのだ―――。

 そのことに気づいた瞬間、動揺のあまり手が震え、カップの中の紅茶がゆらりと揺れた。
 私らしくない失態に、部下たちが訝し気に私を見つめている。私は笑みを返しながら、とある決意を固めた。円満な婚約解消ならともかく、冤罪で一方的に婚約破棄を突き付けられ、挙句に身分剥奪や国外追放なんて冗談ではない。まして死刑や凌辱エンドなど、論外だ。
 幸いにも『断罪イベント』は明日。まだどんでん返しの準備をする時間は十分にある。
 婚約破棄、上等ではないの。むしろ、前世で相思相愛だった夫を思い出した今、他の男性と結婚するなんて絶対に嫌だ。
 ―――というわけで。私レベッカ・ハワードは、明日の『断罪イベント』を『ざまあ返し』で粉砕し、領地に引っ込んで悠々自適な独身生活を謳歌することをここに誓います!

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悪役令嬢(仮)の奮闘

悪役令嬢(仮)の奮闘異世界転生に気づいたので婚約破棄して魂の番を探します

著  者
木村るか
イラスト
氷堂れん
レーベル
eロマンスロイヤル
価  格
1200 円(税抜)
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